まさに百花繚乱(りょうらん)だ。文具店、書店、生活雑貨店などには、さまざまな種類の手帳がずらりと並ぶ。隣をカラーペン、シール、マスキングテープ、スタンプと「デコる(装飾する)」アイテムが華やかに彩る◆春からの新生活を前に買い求める人が多いのだろう。コロナ禍では減ったが、近年は売り上げが絶好調と聞く。スマホ時代になぜ? カレンダー機能に予定を打ち込み、設定すれば、その時刻前にピピッと音や通知画面で知らせてくれる。手取り足取り、便利なのに◆スーツの内ポケットから黒革の手帳をさっと取り出す。できるビジネスパーソン。そんなイメージから「気づけば激変していた」とフリーライターの北尾トロさんは書く。月刊誌連載で手帳の「進化」を追い、人気の理由を探っていた◆スマホはスケジュール、自己管理の道具。手帳は今や予定だけでなく、行動や趣味を記録するライフログであり、「自分が主役」「自己表現の手段」「生きた証し」などの言葉が並ぶ。好きにアレンジしたり、紙ゆえの手触り感や保管、見返しやすさも支持されているという◆2月は「逃げ月」。もう明日で終わる。年度替わりの時期ならでは、今や過去に向き合い、先々を思案する。連載の一節には、普通の日々も「書き残すと自分らしさがある」。電子音から離れ、まずは手帳をデコってみようか。(松)

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