一章 秀吉の憂い(10)【羽柴秀吉譚】 上様はもう振り向くことは無かった。ようやく追い掛け始めた供の者たちの声を背に浴びながら。天道様に溶け込むようにして行く上様の背を見つめながら。儂(わし)はひたすらに駆け続けたよう。  初めは小者(こもの)として取り立てられた。