一章 秀吉の憂い(5)「しかし、上様の亡骸(なきがら)は見つかっていない」 秀吉は鬢(びん)を撫(な)ぜながら嘆息を漏らした。八右衛門(はちえもん)の脳裡(のうり)に閃(ひらめ)くものがあり、「まさか――」 と、思わず口を衝(つ)いて出た。「そのまさかじゃ。上様は実のところ生きておられるのではない…