五穀豊穣と家内安全を願い、棒で地面をたたく子どもたち=吉野ヶ里町松隈

 吉野ヶ里町の松隈地区で8日、少子化のため約10年前から中断していた伝統行事「もぐら打ち」が行われた。子どもたちが各家を回り、わらを巻いた竹棒で地面をたたいて五穀豊穣(ほうじょう)と家内安全を願う行事で、移住者が増えたことをきっかけに老人クラブが協力して復活。子どもたちの元気な声が響いた。

 小学生7人、中学生2人が、長さ3メートルの竹にわらを巻いて縄で結ぶもぐら打ち棒の作り方を老人クラブ会員から教わった。本番では「鶴は千年、亀は万年、こなたの家は万万年」と練習したもぐら打ちの歌を歌いながら、40軒の家を2時間かけて回り、竹棒で庭先の土をたたいた。

 もぐら打ちは豊穣を願う子どもたちの正月行事として県内各地に伝わっていた。同地区では、約20年前は今年の倍の約20人が参加していたが、小中学生がいる家庭が減ったことで中断。子ども向けの行事はほとんど行われなくなったものの、昨年から家族の移住が続いたことで、もぐら打ち復活を期待する声が高まった。

 参加した中学生は「初めてで緊張したけど、大きな声で頑張った」「昔ながらの行事が復活できてよかった」と喜んだ。区長の多良正裕さん(74)は「子どもたちの声が聞こえると地区が元気になる。家を覚えることで何かあった時の安全にもつながる」と話し、子どもが参加する新たな行事も検討しているという。(樋口絢乃)