映画「らかん・ぱねら」、違う、「ら・かんぱねら」を見た。映画の題名はベートーベン、いや、フランツ・リストのピアノ曲からとっている。カンパネラはイタリア語で鐘という意味。故フジコ・ヘミングさんの演奏で有名だが、難しい。楽譜も読めない素人がこの難曲を弾けるはずはない◆そんな思い込みを52歳のノリ漁師が覆す。「弾きたい」という夢を追いかけ、独学でマスターした。映画ではその軌跡に加え、「宝の海」有明海の美しさ、海の恵みを分けてもらう厳しさ、難しさも描かれる。失礼ながら想像以上に良かった◆奇跡を起こすために必要なものはきっと、才能より熱意。夢を追う情熱に年齢は関係ない。練習が楽しければ時間がたつのを忘れてしまう。その結果、指先が鍵盤を記憶するまでになるのだろう。夢に没入するから「夢中」と書くのかもしれない。主演の伊原剛志さんのピアノも上達の様子が見て取れた。いくつになっても夢中になれるものに巡り合えるのは幸せなことだ◆夫婦愛の中に笑いあり、涙あり。伝えたい思いを込めた演奏シーンに故西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」の歌詞が思い浮かんだ◆「支援する会」をはじめ、多くの佐賀県民の支えがあって完成した映画でもある。何より佐賀弁だから分かりやすい。見逃すのはもったいない。(義)

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