旧田代家西洋館での消火訓練の様子。延焼防止を目的とした水膜防御システムもお披露目された

 毎年1月26日は文化財防火デーと定められ、その前後に全国の市町村では、文化財の消火訓練など防災に関する取り組みが実施される。有田町においても1月19日、幸平地区の旧田代家西洋館周辺において、同館から出火、近隣住民からの通報を受け、有田消防署や消防団の消防車などが駆けつけ、消火に当たるという想定で訓練が実施された。

 当日は消防ホースによる消火に加え、消防団に新たに配備された水膜防御システム(ウオーターカーテンホース)による延焼防止訓練も披露され、建物がびっしりと密集する内山地区にとって、また新たな安心をもたらす設備が加わった。

 江戸時代の内山地区は有田千軒とも呼ばれた栄えた場所で、10代佐賀藩主の生涯を記した『鍋島直正公伝』にも、佐賀領中において都府というべき商工業繁盛の地は有田・伊万里のみとするほどである。

 明治27(1894)年時点でも戸数1173戸、人口6147人で、江戸期とほぼ同等な規模で推移しているが、現在では戸数は1200戸程度と変わらないものの、人口は2500人ほどに減少しており、空き家が目立つようになった。

 空き家の増加は防災上でも安全性が危惧されることから、現在町教育委員会では文化財としての内山地区を守るため、地域の特性に配慮した防災計画を住民代表も加わった策定委員会で作成中である。(有田町歴史民俗資料館長・村上伸之)