ミサゴのつがい 撮影・小松常光

 英語ではOsprey(オスプレイ)と呼ばれ、何かと話題の米軍の輸送機の名前は本種から来ている。

 以前はタカ目タカ科とされていたが、現在はタカ科から唯一独立して、タカ目ミサゴ科とされている。いずれにしても、ワシやタカに近い仲間である。

 本種の分布域は極めて広く、南極大陸以外のすべての大陸に生息している。世界の鳥類約1万種のうち、海鳥を除けば、これほど広い地域に生息する種は十指に満たない。

 ミサゴには四つの亜種が知られており、そのうちインドネシア〜オーストラリアに生息する亜種を別の種として扱う場合もある。ただし、遺伝子分析に基づくと、アメリカ大陸の集団が系統的には最も古く、そこからアジアを経てオーストラリアやヨーロッパ、アフリカへと広がったという結果も出されており、分類学的な扱いはいまだ流動的と思われる。

 海水・淡水を問わず、生きた魚を食料源とすることにほぼ特化しており、水面近くを泳ぐ魚を捕獲する。捕獲の際には、足から水中に飛び込む。このような習性から、別名ウオタカとも呼ばれる。

 佐賀県内では海岸や河口付近でよく見られ、水面から伸びている杭(くい)の上などにしばしばとまっている。

 何が本種の広域にわたる分布につながったのかは定かではないが、魚食性に特化し、卓越した水中での採餌技術を身につけたことにより、他のワシやタカの仲間では成し遂げられなかった五大陸すべてへの進出が可能になったのかもしれない。

 ヒトの世界でいえば、米国発で世界中に展開している某大手コーヒーチェーンやハンバーガーチェーンのような存在であろうか。ターゲットとなる顧客層やその獲得戦略を探れば、世界的成功の秘訣(ひけつ)が見つかるのかもしれない。(佐賀大農学部教授)

     =毎週日曜掲載