最近、ACジャパンのテレビ広告がますます増えたと感じていたら、きっかけをつくったタレントの中居正広さんが芸能界からの引退を発表した。自身の女性トラブルを巡り、週刊誌をにぎわせていた◆この問題、真実がベールに包まれているようで何か釈然としない。週刊誌が報じたように、フジテレビ社員が関与していたのだろうか。中居さんの責任に加え、フジテレビが今月17日の記者会見で参加制限をかけたり、動画撮影を禁止したりしたことが問題をさらに複雑にした◆「知る権利」を掲げる報道機関にとって自縄自縛の行為。隠し事があるのではないかという不信感が増す。ACジャパンへの広告差し替えが相次いだのは中居さんに対する責任追及というより、フジテレビに対する抗議の現れだ◆さて、見る機会が増えたACジャパンの広告で印象に残ったのは「決めつけ刑事(デカ)」。SNSに上がる情報をうのみにし、罪のない人を傷つけてしまう危うさを描く。真実を見つめる目を曇らせていないかという警告にも思える◆マスコミは民主主義のとりでであり、権力監視の役割を担う。何より弱者に寄り添う姿勢が求められる。一連の問題で一番の被害者は誰だろう。声を上げたくても上げられない人に思いを巡らせているだろうか。報道機関に働く一人として、そう自問している。(義)
下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。