児童の前で絵付けをして見せる江口勝美さん(左中央)=武雄市の東川登小

江口勝美さん(右)の指導を受け、ろくろを回す児童=武雄市の東川登小

江口勝美さん(手前)がろくろを回してつくった徳利の出来栄えを確認する児童たち=武雄市の東川登小

 「染付・和紙染」の技法で県重要無形文化財に認定されている陶芸家江口勝美さん(88)=武雄市、小山路窯=が、地元小学生の卒業記念に行ってきた「揮毫(きごう)会」が30回の節目で終了した。17日の最後の会は湯飲みの絵付けに加え、ろくろを回す体験もあり、児童は「陶芸の町・武雄」を実感し記憶に刻んだ。

 江口さんは還暦前の1995年から地元・東川登小の6年生を対象に、素焼きの湯飲みに好きな絵や将来の夢などを書く揮毫を指導してきた。湯飲みは釉薬をかけて小山路窯で焼き、卒業式直前に学校に届けている。

 自らが育った武雄市が400年以上の歴史を誇る陶芸の町であることを、卒業後も忘れないでほしいとの思いで続けてきた。会では武雄の焼き物の歴史について講義も行ってきたが、30回目を機に終了する。

 17日は図工室に集まった6年生16人のほか、5年生以下の70人も各教室のリモート映像で参観した。ろくろの実演では江口さんが茶わんや湯飲み、とっくりなどを次々に作り出し、身を乗り出して手元を観察する児童もいた。

 初めてろくろを回した金岡潤さん(11)は「力の入れ方など形作りが難しかったが、実際にやってみて興味がわいた。また挑戦してみたい」と笑顔を見せた。江口さんは「粘土が形になる様子を見て拍手する子もいて、うれしかった。陶芸の心を伝えることはできたと思う」と話した。

 6年生が絵付けをした湯飲みは、3月14日の卒業式までに焼き上げて学校に届ける予定。(澤登滋)