作家の池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』は大会記録に残らない「関東学生連合」の選手たちが主人公。10区間約217キロのレースを中継するテレビ局の視点も絡めながら、「タスキの重さ」や組織を強くする指導者像など箱根駅伝の魅力を伝える◆ストックホルム五輪に出場した金栗四三が創設に尽力した箱根駅伝は、今年が101回目の大会だった。先輩の背中を見て成長した誰かが、今度はその背中を後輩に見せる。そうやってつないできたタスキがある。箱根駅伝のタスキには1世紀分の汗と涙、人間ドラマがしみこんでいる。だから駅伝は、選手の背中を押す見えない力が強いと感じる◆今年の大会も見応えがあった。青山学院大学が逃げ切った優勝争いに加え、来年の出場権をかけたシード権争い、タスキが白色に変わる繰り上げスタート…◆放送では伝えきれない、例えば学生連合のドラマにも思いを巡らせながら、人生は「歩数計」のようなものと、ふと思う。立ち止まったり遠回りしたり、時には後ろ向きに進んだりしても、刻んだ歩数はゼロにはならない。練習や努力はうそをつかない証しと感じる◆駅伝と同じように人生でも手渡すタスキ、受け取るタスキがそれぞれにあるだろう。三が日が過ぎた。穏やかだった天気に感謝しながら、人生の歩数計もさあ新たな一歩を。(義)
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