
お茶に温泉、焼き物と見どころいっぱいの嬉野市。考えたコースは嬉野町の温泉街から観光スポットを巡り、美しい緑の茶畑まで足を伸ばす約17キロの行程だ。山道への不安が頭をよぎったが、「まあ、なんとかなるだろう」と走り出した。
自転車を借りに訪れたのは、温泉街の中にある自転車店「シモムラサイクルズ」。嬉野を自転車で巡りながら茶を身近に感じるレンタサイクル事業「茶輪」の拠点でもある。坂道も進めるスポーツタイプの電動アシスト自転車が相棒に決まり、茶輪のサービスに含まれる水出し茶のボトルを積んでスタートした。
少しこぐだけでスイスイ進み、あっという間に国道34号沿いの「轟の滝公園」に着いた。滝の高低差は11メートル。平地にできた珍しい滝で、温泉客がひっきりなしにやって来るスポットだ。
次に目指すのは岩屋川内ダムに“出現”したゴジラのダムアート。国道を左折して県道6号に入ると、ここから少しずつ上り道に。モーターの力を実感しながら、それほど苦しむことなく、ダム直下の見学スペースにたどり着いた。汚れの洗浄部分と未洗浄部分の濃淡で描き出したゴジラは迫力があり、県内外からの見学者をうならせていた。

いったん山道を下り、いよいよ茶畑に向けて本格的な上りが始まった。電動アシスト車の操作にも慣れ、脚に負荷はかかるものの確実に道路を上り続けた。山の中を1・5キロほど進んだ辺りから、道路の左右は茶畑の風景に。道路脇に自転車を止め、茶輪で頂いたボトルのうれしの茶で一服。茶畑でのティータイムは至福の時間だった。
山道を下って進むと、焼き物の里・吉田地区に入った。「肥前吉田焼窯元会館」を過ぎ、県道41号沿いの農産物販売所「吉田まんぞく館」で名物・だご汁に舌鼓を打った後、ゴールのシモムラサイクルズへ。近くの「シーボルトのあし湯」に立ち寄ったら、疲れた脚もいっきにほぐれた。
(鹿島・嬉野支局 市原康史)

【ココもオススメ】
「茶輪」お薦め「シモムラサイクルズ」

嬉野の山間部にある茶畑を巡るには自転車店シモムラサイクルズが拠点のサービス「茶輪」がお薦め。茶商と同店がコラボした企画で、自分で好みのうれしの茶を入れた「茶輪ボトル」が貸し出される。スポーツタイプの電動アシスト自転車の利用料(1日1800円)には茶輪ボトル貸し出し料も含まれる。さらに、市内の茶葉ステーションでは1杯200円でお茶を追加できる。
■シモムラサイクルズ
【住】嬉野市嬉野町下宿乙938―1
【電】0954(27)7733、水曜定休
「吉田まんぞく館」人気のだご汁

県道41号鹿島嬉野線の農特産物直売所「吉田まんぞく館」で人気のだご汁(280円)。ゴボウ、シイタケ、ダイコン、鶏肉などのたくさんの具材をダシ汁で煮込んだ料理で、訪れた人が「昔よく食べよった」と次々に買い求める。寒風の中での自転車旅の途中に立ち寄って食べれば、体も心もぽっかぽか。手作りのおやきやまんじゅうも素朴な味が好評で一緒に食べてみたい。1月5日から営業。
■吉田まんぞく館
【住】嬉野市嬉野町吉田甲2200―2
【電】0954(43)8085
伝統的な町並み「塩田津」

嬉野市塩田町の「塩田津」には伝統的な建築「居蔵(いぐら)造り」の建物が並ぶ。江戸時代に長崎街道の宿場町で栄え、有明海の干満差を利用した川港として水運の拠点でもあった。国の「重要伝統的建造物群保存地区」でもある町並みを散策し、古民家を改装した飲食店などでほっと一息。西九州新幹線嬉野温泉駅から約9キロ、JR肥前鹿島駅から約5キロに位置し、両駅からレンタサイクルを利用できる。