日々のちょっとした出来事を独特な筆致でつづる著者・やーこさんの短編集第3弾。今回は、愛猫の「うに」と「ぺる」の2匹などネコにフォーカスを当てた39編を収録した。
淡々と、強烈なインパクトを残していく文章が特徴的の“やーこ節”がさく裂。表紙にもある「尻でカスタネット」というワードが異彩を放っている。なぜ奏でようと思ったのか。その動機もちゃんと書いてある。
著者のトラブルをシュールな光景に変える能力は、今作品でも健在だ。例えばこんな場面がある。愛猫が舌を出してせきをするようになり、動物病院へ連れて行くことに。状況説明のために持参したネコを描いたイラストは、友人からは妖怪「あかなめ」と評されたそうだ。その絵に、読んでいた私も腹を抱えることとなった。
うにとぺる以外のエピソード以外にも、友人宅のネコ・もんじろうや、神妙な面持ちで呼び止めてきたネコなども登場する。やーこさんの周囲は、ゆかいなことであふれている…。そう感じるエピソードが盛りだくさんだ。
イラストは、会社員をしながら、動物や僧侶の絵をXに投稿している十筆斎さんが担当した。ゆるいタッチで描かれたうにやぺるの幸せそうな表情に癒やされる。
ネコたちのおかげで、さまざまな出来事から助けられているとつづる著者。愛猫2匹には、一秒でも穏やかに、長生きしてほしいと願っているという。やーこさんとうにとぺるの日常がこれからものんびりと続いてほしい。(KADOKAWA/1430円)
(コンテンツ部・池田知恵)