12月を迎えて、急に寒さが増してきた。気象庁では、9月から11月が秋、12月から2月を冬とするが、今年はいつまでも暖かい日が続き、秋らしい秋の期間はあっという間に過ぎてしまった。
有田では、紅葉はまだ色づいた葉を付けたままだ。暖かさのせいか、それほど鮮やかとも言えなかったが、何だか今になって色を取り戻したようにも思える。
この当たり外れのある紅葉と違って、毎年きっちりと鮮やかに色づくのが、泉山にある大イチョウである。大正15年に国の指定を受けた天然記念物で、誰が言い出したのか不明ながら、一応、樹齢千年ほどということになっている。
イチョウは、2億年以上も前に出現した、国際自然保護連合の絶滅危惧種にも指定される「生きた化石」である。今では世界中に分布しているが、野生種ではなく、日本にも中国大陸から仏教の伝来とともに持ち込まれ、布教活動とともに全国へと広まったという。
当時、町の西部の南原地区周辺に窯を築いていた陶工たちが、深山に分け入り有田の東端で豊富な泉山陶石が発見したのは、およそ400年前の1630年前後のこと。その近くで偉容(いよう)を誇るイチョウは、すでに樹齢は600年ほどで、当時から大木だったに違いない。
泉山磁石場までの目印だったためか、当時の泉山地区は巨木を意味する「歳木山」という地名で、それに代わって「泉山」の地区名となるのは、17世紀末のことなのである。(有田町歴史民俗資料館長・村上伸之)