
戦略的企業立地
近年、県内には各業界をリードする世界的な企業が続々と進出しており、今年4月には新たに唐津市厳木町の「新産業集積エリア唐津」への企業進出も決定した。県では、さらなる企業誘致につなげるため、鳥栖市と連携して県内初の官民連携による新たな大規模産業団地の開発に着手するなど、企業進出の受け皿となる産業団地の確保を進めている。
小郡鳥栖南スマートインターチェンジ開通
企業誘致、産業発展の足がかりに

福岡県小郡市と接する鳥栖市東部に今年6月開通した「小郡鳥栖南スマートインターチェンジ(SIC)」は全国で初めて、2県にまたがるSICとして佐賀県、福岡県、鳥栖市、小郡市および西日本高速道路が共同で整備を行った。九州自動車道と長崎自動車道、大分自動車道がクロスする交通の要衝にあり、物流業が盛んな鳥栖市内のアクセスが便利になり、開発中の大規模新産業団地「サザン鳥栖クロスパーク」にも至近で、地域のさらなる産業活性化にもつながる。
小郡鳥栖南SICには、誤って進入した車が安全にUターンできる円形通路「環道型退出路」を九州で初めて採用した。誤進入した車はインターホンで職員に連絡し、来た道を戻ることなく、円形通路のゲート開閉により元の道路に戻ることができる。SICを設置するためには、誤進入した車がUターンできるスペースの確保が必要だが、この方法を採用したことで用地取得費も抑えたコンパクトな設置が実現するなど、先進的なアイデアが盛り込まれている。
開設に合わせて佐賀、福岡両県はアクセス道路となる県道鳥栖朝倉線(全長約1・6キロ)を先駆けて整備した。

小郡鳥栖南SICと県道鳥栖朝倉線の開通により、企業が集積する鳥栖商工団地からは車で2分、物流・倉庫業など30社以上が入る産業団地「グリーンロジスティクス・パーク鳥栖」からは4分で高速道路が利用できるようになった。道路課は「産業団地などから高速道路への所要時間が短縮されて物流が効率化され、高速道路利用者の交通分散により、一般道路を走るトラックなどの大型車両が減り、交通混雑の緩和が期待される」と話す。
サザン鳥栖連携プロジェクト
交通の要衝、次世代型の産業団地へ

県内では、シリコンウエハー製造大手のSUMCOが伊万里市や吉野ヶ里町に新工場の建設を計画。また、鳥栖市では、久光製薬が国内の研究開発拠点を移転集約し、アイリスオーヤマが食品事業の生産拠点化を行ったほか、アサヒビールが博多から工場の移転を計画するなど、各業界をリードする世界的な企業が続々と佐賀へ進出している。県では、さらなる企業誘致につなげるため、市町や民間と連携しながら、企業進出の受け皿となる産業団地の確保に取り組んでいる。
特に企業からの引き合いの多い県東部では、交通の要衝という優れた立地環境を生かして、スマートインターチェンジの誘致からアクセス道路の整備、周辺開発に取り組む「佐賀県・鳥栖市サザン鳥栖連携プロジェクト」を進めている。今年3月にはアクセス道路、今年6月には「小郡鳥栖南スマートインターチェンジ」が開通し、現在は大規模産業団地の開発に取り組んでいるところだ。
佐賀県初となる官民連携による大規模産業団地「サザン鳥栖クロスパーク」(34ヘクタール)は、民間事業者が、県や鳥栖市と連携しながら、用地買収から造成、企業誘致までを一貫して行う。今年3月に東急不動産、日本国土開発、丸紅の3社でつくるグループが開発事業者に選定され、再生可能エネルギーの活用や地域との共生を図るなど次世代型の産業団地づくりを目指して開発を進めている。
企業立地課は「民間の力を最大限生かしながら、佐賀県のかがやく未来につながるよう、今後もスピード感を持って企業誘致に取り組んでいく」と話す。

新産業集積エリア唐津に佐賀鉄工所進出
今年4月、唐津市厳木町の産業団地「新産業集積エリア唐津」に、国内屈指の自動車用高強度ボルトメーカー「佐賀鉄工所」の進出が決まった。
「新産業集積エリア唐津」は、県と唐津市が共同で整備した産業団地で、地盤が強固で地震に強く、高台で浸水想定区域外にあり、高規格道路のインターに近いなどの優位性がある。県は、この優位性を積極的にPRするなど、誘致活動に力を入れてきた結果、今回団地全体が一括分譲されることになった。
令和9年の操業開始を目指す同社の新工場は、電気自動車向けの新製品生産も検討しており、将来の成長を担う重要な工場となる。
企業立地課は「将来の成長基盤の主軸となる拠点として佐賀が選ばれたことは大変誇らしいこと、地域と共に一層成長・発展されることを期待している」と話す。