
磨き、高め、未来に継なげる
持続可能な地域づくりには、密接な関係にある農林水産業の維持発展が不可欠だ。佐賀牛は佐賀県の処理施設から輸出が始まり、子牛の生産から輸出までを県内で全て賄える体制が整った。2025年1月には県内で全国農業担い手サミットが開かれる。地域を支える農業を磨き、高め、未来につなげる取り組みが進められている。
佐賀牛、県内施設から初輸出
世界へおいしさ届ける

佐賀県高性能食肉センター「KAKEHASHI(かけはし)」(多久市)で輸出向けに処理された佐賀牛が7月、初めて米国に向けて出荷された。「佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛」を県内から世界へ直接届けることで、誕生から40周年を迎えた佐賀牛のさらなる浸透や、消費拡大を目指す。
「KAKEHASHI」は、衛生面や動物福祉に配慮するなど輸出対応可能な施設として整備し、2023年6月に本格稼働した。従来は、輸出する際には県外の施設を利用しており、処理頭数に制限があったが、稼働により県産和牛の輸出を増やすことが可能になった。

同年12月、米国向けの輸出施設として厚生労働省の認定を受け、今年7月に米国東海岸に向けて佐賀牛が初出荷された。同月にはタイ向け輸出施設としての県の認定を受け、9月に県産和牛がバンコクへと出発した。輸出を増やすため、現在、台湾、シンガポール、香港向けの申請の準備を進めている。
こうした「佐賀から世界へ」の輸出に伴って力を入れるのが、海外での佐賀牛ブランドの浸透だ。「saga beef」(サガビーフ)の名で、香港などアジアを中心にした一部の国・地域で既に流通しているが、流通・貿易課は「今後は、佐賀から直接輸出が始まった米国などでも浸透させたい」と話す。
佐賀牛の特長や価値を現地で伝えてもらうため、消費者の食卓に届ける海外の業者らへのより一層の売り込みを図る。バイヤーを招いた産地視察のほか、現地では輸入業者や小売店、飲食店に対しプロモーション活動を展開している。
1月、全国農業担い手サミット
県内初開催、魅力を発信

日本の食を支えるとともに、環境の保全や洪水防止・水源かん養の多面的機能を有し、地域づくりで重要な役割を占める農業。従事者の確保が求められる中、「全国農業担い手サミットinさが」が2025年1月22、23日の両日、県内で開かれる。「稼ぐ農業」の実践で新たな担い手が生まれる好サイクルを目指して、県内外の農業者がネットワークづくりに取り組む。
同サミットは26回目で、県内では初開催。全国農業会議所と同サミット実行委員会が主催する。「磨き 高め 未来に継(つ)なげる日本農業~集え!担い手 維新の地 佐賀へ~」を大会テーマに、約1500人がSAGAアリーナに集う。
全体会では、(一社)アグリフューチャージャパン代表理事理事長で食料・農業・農村政策審議会委員などを務めた佐賀市出身の合瀬宏毅氏が基調講演を予定する。食をめぐる国内外の環境が大きく変化する中、日本農業の現在と未来について語る。事例報告は、先進的な栽培技術や経営手法を学ぶ貴重な機会となる。
サミットでは、佐賀農業の魅力も発信する。現地研修会は県内6地域25コースを用意。全国茶品評会で2年連続で4冠を達成したうれしの茶、研修修了生が就農間もなくから県内トップクラスの収量を上げているキュウリのトレーニングファームなどを紹介する。
次代につなげるため、農業大学校の学生や農業系高校の生徒も参加予定。農業経営課は「一流の農業経営を肌で感じ、刺激を受け、経営のレベルアップに生かしてほしい」と期待する。

「唐津ん魚」のご当地グルメ開発

玄海地区で水揚げされた「唐津ん魚」のご当地グルメ「青と白の唐津ん魚めし」と「幻の唐津んあら鍋」を開発。小規模な漁法で丁寧に扱われ、漁場と市場が近いため、鮮度と品質の高さが売りだ。県内の認定店が自慢の逸品にして提供している。
通年楽しめる「魚めし」は、アジなど青魚と呼子名物のイカや白身魚を使い、調味料などで「味変」が楽しめる。高級魚の「あら鍋」は脂が乗る11~1月限定で、だしを味わい尽くす鍋の〆も用意している。
唐津ん魚のブランド力を向上させ、県内各地での需要拡大を進める「唐津ん魚FAN拡大プロジェクト」の一環。水産課は「この機会に多くの方に食べてもらいたい」と話す。