
産業の成長後押し
企業の人材確保が全国で社会問題化する中、県は県内で活躍する人材を育成、定着してもらう事業に力を入れている。高校生、保護者、教員に県内企業を訪問してもらい、その素晴らしさを体感してもらうことで、県内就職を後押しする。また、各企業においても人材確保が喫緊の課題となっているデジタル人材を育成しようと、高校生向けのプログラムも始めた。高等教育機関、産業界などと連携しながら未来の佐賀を創造する人材を育成し、地元企業の成長を後押しする。
高校生、保護者、教員向け企業訪問ツアー
職場の雰囲気や仕事内容体感

県は本年度、「SAGA県内企業トリプルツアープロジェクト」を新規事業として取り組む。高校生、保護者、教員それぞれが県内企業を見学するツアーを計画する。現地にしかない「生の情報」に触れて、県内企業の魅力を深く知ってもらい、県内就職率を向上させるのが狙いだ。
ツアーでは、会社説明や見学だけでなく、実際に働いている若手社員を見て、直接話を聞きながら、現場の雰囲気を知ってもらう。
今回の事業を通して、県内企業の「採用力」を強化する狙いもある。人事コンサルタントが、ツアーを受け入れる企業に対して効果的なPRができるようにする。客観的な視点で企業のPRポイントを抽出して、企業見学プログラムの構築を支援したり、効果的な企業説明の仕方やプレゼン資料の作成も支援する。自社開催の企業見学やほかの就活イベントなど、今回のツアー以外でも活用してもらうことを目指す。
コンサルによる企業支援について、産業人材課は「第三者の視点を入れることで、自社の強みを客観的に知ることができる。工場・会社見学を受け入れる時、一番いいところを伝える参考になるはず。企業にノウハウが蓄積されることで一過性に終わらない取り組みにしていきたい」と語る。
高校生向け講座「セイレンカタ」スタート
佐賀を担うデジタル人材育成

人材確保が喫緊の課題となっているデジタル人材を育てようと、県教育委員会は本年度から、高校生を対象とした育成プログラム「DI SCHOOL SEIRENKATA(セイレンカタ)」を始めた。佐賀市のIT企業に運営を委託し、県内19高校の1年生約100人が3年間、最新の実践的なデジタル技術を学ぶ。修了後は情報系の大学への進学、県内で就職、起業を目指す。
講座は5~11月の週1回夕方や土曜日、県内7拠点で実施。企業などから派遣される伴走コーチによるアウトプット型中心のスタイルの学びが特徴だ。産学金官が連携し、佐賀大や有明高専をはじめ、佐賀銀行、半導体関連企業など17社・団体が支援するのも特徴で、半導体回路設計、プログラミング、データサイエンス、AI(人工知能)に加えアントレプレナーシップ(起業家精神)の視点を学ぶ。大学レベルの知識と先を見据えた課題解決能力を習得することで進学後はさらに高度なスキルを身に付け、企業等の即戦力、起業家を目指す。

2年目には興味ある分野を研究する「アドバンスト」、その後、専門性をさらに高めた「マスター」プログラムへ進む。将来的には企業などでつくるコンソーシアムで運営する。毎年新たに1年生を募集していくことにしている。
プログラムは、幕末に日本中を驚かせた鍋島藩の研究開発拠点「精煉方」から名付けた。教育DX推進グループは「想定の倍以上の申し込みがあり、子どもたちの関心の高さを改めて知った。実践的な知識と技術をベースに、先を見据え価値観を創造する資質を身につけ、佐賀をけん引する人材になってほしい」と期待を込める。

高校生の県内就職率65%以上目指す
高校生の県内就職率65%以上を目指す、県の取り組み「プロジェクト65+(プラス)」。2024年3月卒の県内就職率は67.0%(速報値)と4年連続で目標を達成し、プロジェクト開始からの伸び率は全国1位となるなど成果を上げている。
このプロジェクトでは、主に高校2年生を対象とした合同企業説明会や、高校生と保護者が一緒に参加できる合同企業説明会などを開催。県内企業の経営者などによる講演を通じて佐賀で働き・暮らす魅力を高校生に伝えている。産業人材課は「県内には、独自の技術やサービスを持った企業や、佐賀を拠点に世界で活躍する企業など、多くの素晴らしい企業があることを伝えたい」と話す。