今が未来の分岐点

 徒歩や公共交通機関をくらしに取り入れる「歩くライフスタイル」の推進は、脱炭素型社会実現の第一歩。県では、自動運転バスの実証を重ね、実用化を目指す。さらに、スマートフォンで購入できる県内の往来を手軽にできるデジタルチケットの販売など、公共交通で便利に移動できる方法を提案している。

2027年度の運用開始目指す自動運転バス

SAGA2024で運行、1835人利用

国スポ期間に合わせて運行された自動運転バス=佐賀市

 全国的にバスの運転士不足が深刻で、減便や路線廃止を余儀なくされる中、政府は自動運転の実用化を急いでいる。県と佐賀市は2023年度から自動運転バスの実証運転を行っており、24年度は特定条件下で運転士が不要になる「レベル4」相当を一部区間に導入。27年度の運用開始を目指している。

 前年度は、一部を手動で操作する「レベル2」だったが、今回は佐賀駅バスセンターから、SAGAサンライズパークまでの運行ルートのうち、路上駐車が少ないアパホテル佐賀駅前中央付近から佐野常民像前交差点までの約650メートルで「レベル4」相当を導入。運転士は同乗するものの、原則、運転には介入しない。ほかの区間では「レベル2」で走行する。

 本年度の運行区間は前年度とほぼ同じものの、使用車両はEVバスとなった。前年度の実証運転では、信号が黄色に変わった瞬間に自動でブレーキがかかるため、「急ブレーキがきつい」という乗客からの声もあった。今回は信号の残り時間などの情報を信号機から通信して把握するシステムを新たに試験導入。信号が変わった瞬間の急停車を防ぎ、より快適な乗り心地を追求する。

 10月開催のSAGA2024(国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会)に合わせ、佐賀駅バスセンターから大会メイン会場のSAGAサンライズパークの区間で自動運転バスを運行した。運行した14日間で延べ1835人が利用し、「未来を感じることができた」や「自動運転とは感じないほどの乗り心地だった」といった声が寄せられたという。

 政策部は「今後も先進技術に挑戦し、新しい社会の実現を佐賀から取り組んでいきたい」と話す。

1日バス乗り放題デジタルチケット

県内周遊、路線バス利用促進

デジタル乗車券のイメージ

 県や交通事業者などでつくる「さがMaaS事業実行委員会」は、路線バスの利用促進のため、県内すべての路線バスが24時間乗り放題になるデジタルチケットをSAGA2024の開催に合わせて販売した(10月31日販売終了)。

 SAGA2024の競技観戦や県内周遊の旅で利用してもらうよう、昭和バス・佐賀市営バス・祐徳バス・西鉄バス・JR九州バス・西肥バス・ジョイックスバスといった異なるバス会社の路線をスマートフォン一つで利用できる便利なデジタルチケットで、スマートフォン向けアプリ「my route(マイルート)」を活用した。

 「my route」は、鉄道や路線バス、タクシーはもちろんのこと、シェアサイクルなど多様な移動手段を組み合わせた経路を検索することができるほか、県内を便利にめぐるデジタルチケットを随時販売している。

 地域交通システム室は、「アプリを活用し、便利で身近に公共交通を利用してもらい、歩くライフスタイルを促進したい」と話す。

トピックス

「ストリートフェスタ」でホーム戦盛り上げ

 県は歩くライフスタイルを推進するプロジェクト「歩こう。佐賀県。」に取り組んでいる。この一環で、SAGAアリーナの来場者にJR佐賀駅からSAGAサンライズパークまでの道のりを楽しみながら歩いてもらおうと、県は、バスケットボール男子Bリーグ(B1)の佐賀バルーナーズと、バレーボール・SVリーグ女子のSAGA久光スプリングスのホーム戦に合わせて「ストリートフェスタ」を開催した。

 佐賀バルーナーズのチアリーダーや、SAGA久光スプリングスのマスコットキャラクターハルちゃんと共にチームカラーの青色に装飾した鳥居がある鏑流神社まで一緒に歩いたり、沿道にはフォトスポットや佐賀商業高校生によるパフォーマンスなど楽しく歩くイベントが行われた。11月に計4日間開かれ、世界のグルメを楽しめる企画もあり、多くの人が訪れた。

 SSP施設環境推進室は「アリーナイベントにお越しの際は、サンライズストリートを楽しく歩いて、来場いただきたい」と話す。