人の想いに寄り添い続ける

 県は福祉や医療分野で困難を抱える人たちの思いに寄り添う取り組みを進めている。本年度新たに、訪問看護師によるサポートで介護する側の休息時間を確保する「在宅レスパイト支援」や、人工透析患者や送迎する家族などの負担を軽減するための通院支援、障害者ボランティアグループの活動支援を行っている。
 

在宅レスパイト

介護者の休息サポート

看護師を自宅に派遣し、介護する家族などの休息を支援する「在宅レスパイト」事業のイメージ

 在宅療養している難病患者を介護する家族などが休息できるよう、県は「在宅レスパイト」事業を本年度から始めた。介護者の代わりに訪問看護師が見守りとケアを行い、リフレッシュや病院受診の時間に充ててもらうなど幅広い活用を見据えている。

 人工呼吸器や吸引器を使用する難病患者が対象。定期的なたんの吸引や体位交換など、常時介護や見守りが必要になる。住み慣れた自宅に看護師を派遣するため、患者にとっては療養環境が変わらず安心できることも特徴だ。健康福祉政策課は「眠れない、外出できないと話す介護者もいる」とし、「家族が自分の時間を確保できるようサポートしたい」と力を込める。

 事業費には約1011万円を計上し、10月末時点では9人から申請があった。短時間で気軽に利用できるのも特徴で、年間48時間まで利用できる。「病院受診だけでなく、リフレッシュで温泉に行った。学校行事で利用した」などの声が寄せられているという。

人工透析患者の通院支援

家族の送迎負担など軽減

人工透析を終えて車に乗り込む女性。足が悪く歩行器を使っているため、ドアツードアでの移動を余儀なくされている=佐賀市

 県は、人工透析患者の通院を支援する制度を始めた。県内の人工透析患者は2593人(2023年12月末時点)。一般的に週3回、1回あたり4~6時間の治療が必要であり、通院には患者本人の体力的・経済的負担、家族の送迎負担が伴う。このような負担を減らそうと、県は人工透析患者の通院支援に取り組んでいる。 

 県による支援策は2通り。一つ目は、利用料金の4分の1を割引した福祉有償運送事業者に対する経費の補助。二つ目は、人工透析医療機関が送迎サービスを新設・拡充した場合に車両整備費、人件費、燃料費の一部を補助する。

 予算は1836万円で、10月末時点で医療機関4件、福祉有償運送事業者5件の申請を受けている。障害福祉課は「患者本人やそのご家族にとって通院に伴う負担は大きい。人工透析患者の皆さんが、住み慣れた場所で自分らしい生活を送りながら、治療を続けられるよう支援していきたい」と話す。

 

障害者ボランティアグループ支援

新たな活動のきっかけに

聴覚障害児が楽しめるよう工夫を重ねてイス取りゲームを楽しむ「手話サークルむつごろう おてての会」=提供

 障害者の社会参画の推進の一環として、県は障害のある方やその家族など当事者の思いに寄り添いながら地域で活動するボランティアグループの支援を新たに始めた。

 今回の支援内容は活動に対する経費の一部を補助するもので、交流会の開催費や外部講師への謝金、交通費など幅広い経費に利用できるのが特徴。支援を受けたボランティアグループからは「普段は自己資金でまかなっていたが、幅広い経費が対象で使いやすい」「やりたいと思うものの資金がなく困っていたため、とても助かった」との声がある。

 県内には手話サークルや点訳・音訳の会、発達障害児者や医療的ケア児の家族の会などさまざまなボランティアグループがあり、10月時点では17団体から申請を受けている。障害福祉課は「障害がある方との協働や社会参画を進めている県にとって、ボランティアグループの皆さんは大切な存在。この事業が自発的な取り組みを支え、また新たな活動を生むきっかけになれば」と期待を込めている。

 

トピックス

救急現場との連携へ高機能カメラ実証開始

 県は救急現場と救急救命センターとの連携向上のために、佐賀大医学部附属病院の「高度救命救急センター」で、救急現場の患者の容体を映像で把握できる高機能カメラの実証を始めた。情報のやりとりや、受け入れ体制の準備などへの効果を検証する。

 これまで現場とセンターに待機する医師が電話でやりとりをしてきたが、より効率的に情報を集めようと実証に取り組む。360度映し出せるカメラをドクターカーとドクターヘリに導入し、センター側の医師が遠隔でズームなどの操作をしながら、患者の情報を入手できる。医務課は「センター側の医師からも、処置へのアドバイスを受けるなどの効果も期待できる」と話す。