東京タワーのライトアップが始まったのは1989年の元日。照明デザイナーの石井幹子(もとこ)さんが手がけた。当時の日本には街灯やネオンサインなどの照明しかなく、夜になると街は暗く沈んだ。東京タワーのライトアップは昭和天皇の逝去で一時中止されたが、再開後は平成という新時代を照らす明かりとして人気を集めた◆以来35年。石井さんの照明デザインは都市の夜景に変革をもたらした。イルミネーションは身近な場所に広がった。街に華やぎをもたらし、見る人の心を温める◆秋を満喫する間もなく、冬が駆け足でやってきている。夜気がさえると明かりの美しさが増す。毎年この時季は時々、佐賀市の中央大通りを車で走る。ライトファンタジーを見るためだ◆そんな寄り道をしなくても、イルミネーションを楽しめる場所は増えた。SAGAサンライズパークでは昨年に続きクリスマスイルミネーションが施された。わが社も街路樹と社屋を光で演出し、毎週金曜日にクリスマスマーケットを開く◆照明デザインの分野を自力で切り開いてきた石井さんは、自分の五感や直感を信じることが未来を照らす光になるという。その言葉は困難な状況に陥った時、暗闇を照らす1本のろうそくになれるかを問いかけているようだ。自分を信じる力を忘れなければ未来はそんなに暗くない。(義)
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