福岡市博多区、福岡空港の近くに「夢を語る公園」がある。この愛称使用を行政に働きかけたのは福島敏廣さん(北九州市)だ。佐賀市で先日開かれた犯罪被害者支援フォーラムで知った◆2005年1月18日、敏廣さんの一人娘である啓子さんは出勤途中、見知らぬ男に襲われ、この公園で23年の生涯を閉じた。娘の命が無残に奪われた当時を振り返る敏廣さんの話に胸が詰まった。悲しみ、怒り、憎しみ…。「地獄のような十数年」という言葉は誇張ではないはずだ◆癒えない悲しみの中、娘の死を悼んでくれる人がいることを知り、プラスの感情が芽生える。客室乗務員を目指し、人とのふれあいを大切にしていた娘を思い、敏廣さんは公園に桜を植え、ベンチを寄贈。号泣の場でしかなかった公園が昨年、夢を語る公園となり、生きる力を与えてくれる場所に変わった◆敏廣さんは講演で、配慮を欠いた当時の報道に疑問も投げかけた。犯罪被害者は心ない言葉に2次被害を受けることが多い。「メディアスクラム」も解消されたとはいえない。ペンを握る一人として自戒しなければ◆きょうから犯罪被害者週間。きっかけとなった犯罪被害者等基本法の成立から12月1日で20年になる。誰でも事件事故に巻き込まれる可能性はある。まずは被害者の悲しみに寄り添うことから始めたい。(義)

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