公立中学校の運動部活動を地域のスポーツ団体に委ねる「地域移行」をテーマにした講演会がこのほど、佐賀市のグランデはがくれで開かれた。新潟県長岡市で地域移行を担当する石川智雄さんが、子どもの目線に立った地域クラブづくりの大切さを語った。
長岡市は、学校教育課内に部活動地域移行室を立ち上げ、専任の職員も配置。石川さんは部活動地域移行担当課長を務める。
石川さんは顧問を担う教員の負担増や深刻化する少子化を踏まえ、「部活動の問題は先行きが難しいが、いつまでも先送りできない。全体として持続可能なスポーツ、文化芸術の環境をつくらないといけない」と指摘した。
地域移行を考える際の注意点として、「デメリットや課題ばかりを挙げると『じゃあ部活に戻せ』となる。メリットも同時に発信することが大切」と述べ、部の数が少ない学校に通う子どもにとって選択肢が増えたりする利点を伝えた。
また、日本では保護者ら大人側が過熱して勝利至上主義に陥る傾向にあるとし、小中学生から全国大会の上位を目指す風潮に疑問を投げかけた。個々の成長など勝利以外に得られる価値に触れ、「スポーツの在り方をちゃんとみんなが理解すると、実は地域移行はどんな形でやったって成功すると思う。勝たせたいとか、強くしたいという大人の思いが強いとうまくいかない」と語った。
県スポーツ協会が主催し、県内の総合型地域スポーツクラブや学校、自治体の関係者ら約40人が出席した。(円田浩二)