立ち寄った書店のとある書棚にふと目をやった。平積みにされている本。笑みをたたえる口がずらっと並んでいる。不気味で異様な光景を前に、思わず立ち止まってしまった。
『近畿地方のある場所について』などで知られる背筋さんの作品だ。大学生たちがとある心霊スポットへ肝試しに行ったときのことについて、一人ずつ語っていく。
読んでいくと、だんだんと一連の出来事がどういう経緯で起きたか分かってくる。全ての証言を読み終え、めくると最後にインパクトを残す。それを知った上でもう一度最初から…と1回で終わらない怖さを味わえる。
本の大きさは手のひらぐらい。ページ数も63ページと一般的に見れば少なめだ。小さいが、真っ赤な口元が大きく写し出された表紙が、何ともいえない薄気味悪さを演出している。この本は視覚的な仕掛けも施されているため、ぜひ紙版で読むことをお薦めする。なぜタイトルが「口に関するアンケート」なのか? それは自分の目で確かめてほしい。
「口は災いのもと」というように、思っても口に出してはいけないことはある。言ってしまったがために、取り返しのつかなくなることだってあるのだから。(ポプラ社/605円)
(コンテンツ部・池田知恵)