自民党総裁選に初めて挑んだ女性は、現東京都知事の小池百合子さん。5人が争った2008年のこの選挙で小池さんは3位だった。以来16年。女性の進出を阻む政界の「ガラスの天井」は変わらずに分厚かった◆女性2人を含む過去最多の9人が立候補し、きのう投開票された総裁選は石破茂さんが決選投票の末、高市早苗さんに勝利した。石破さんが総裁選に挑んだのは5回目。最初の挑戦は08年で、小池さんより得票は少なく最下位だった。2回目の12年は決選投票で敗れた。3、4回目も大きく届かなかった。それでも諦めなかった。「捲土(けんど)重来」の言葉が似合う歩みである◆元プロ野球監督の星野仙一さんはリーダーの心得について「目的を述べる」「公平である」「決断を迷わない」「責任をとる」「明確なビジョンを持つ」「覚悟を決める」ことなどを挙げる。政治に限らず肝に銘じたい言葉だ◆新総裁は決まったが、自民党派閥の裏金事件で失墜した政治への信頼が回復したわけではない。石破さんは「政治家の仕事は勇気と真心をもって真実を語ること」を信条とし、きのうの演説でも使った◆過去の総裁選と同じように今回も聞こえのいい公約が並んだ。問題は実行力。政策活動費の在り方をはじめ勇気と真心で難題に対処できるか。新しいリーダーの手腕を国民は注視する。(義)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。