シベリア抑留の体験を話す鳥谷邦武さん=佐賀市の平和会館

佐賀県で初めて開かれた全国強制抑留者協会によるシベリア抑留者の慰霊祭=佐賀市の平和会館

 アジア・太平洋戦争の終結後に旧ソ連などで強制労働をさせられたシベリア抑留者の慰霊祭が14日、佐賀市で開かれた。遺族らが過酷な環境で亡くなった犠牲者を追悼し、歴史の継承に努めて戦争による惨禍を繰り返さないと誓った。

 全国強制抑留者協会(東京都)が佐賀県で初めて企画し、抑留者の遺族ら約50人が参加。協会は県内での活動実績はなかったが、来年の戦後80年に合わせ、佐賀と縁のある会員らで実行委員会をつくった。

 式典では、黙とうや献花で抑留者を追悼し、実行委員長の中島肇さん(72)が「世界では武力による紛争が後を絶たないが、恒久平和の確立に全力を尽くすことを誓います」と述べた。元抑留者で佐賀市在住の鳥谷邦武さん(97)が講演し、「拳半分くらいの黒パンだけで1日8時間働かされた」「戦地でいろんな死に方を見たが、飢えや凍死で死ぬのが一番残酷だと思う」などと話した。

 厚生労働省の推計では抑留者約57万5千人のうち約5万5千人が帰国できないまま死亡し、佐賀県出身者は現在569人の身元が分かっている。協会は来年も県内での慰霊祭を予定している。(青木宏文)