B-CAS(ビーキャス)カードを使わずに、テレビの有料放送を視聴できる不正なプログラムを作ってインターネット上で公開したとして、警視庁と佐賀県警は8日までに、不正競争防止法違反の疑いで、佐賀市の無職少年(17)を逮捕した。逮捕は6日。【共同】
警視庁によると、B-CASカードを巡っては、無料視聴できるようにカード自体を不正改造する事件の摘発は相次いでいるが、カードが不要となるプログラム提供による摘発は初めて。
B-CASカードは、放送を視聴するためにテレビなどの受信機に挿入するICカードで、有料放送は契約者だけが受信できるようになっている。少年は「事件について語りたくない」と供述、認否を留保しているが、逮捕前の任意聴取には「ネット上でデジタル放送に関する情報を何百ページも読み込んだ。(有料放送を見るのに)カードが邪魔だった」と話していたという。
逮捕容疑は昨年6月23日、自宅から自身のホームページ(HP)にB-CASカードが不要となるプログラムを公開した疑い。少年は無料でダウンロードできる状態にしていた。
少年は、B-CASカードが不要となるプログラムを独学で開発し、ネット上に公開。テレビが視聴できるパソコンでダウンロードし、有料放送ごとに設定されている暗号キーを入力すると、有料放送が無料視聴できる仕組みだった。
正規の契約者には、事業者側から受信機に送られる放送波で暗号キーが解除され、放送を視聴できるようにしている。暗号キーは第三者が独自に解析し、ネット上の掲示板などで公開されているという。
少年のHPでプログラムが提供されていることに気付いたB-CASカードのサービスを提供する会社が2014年12月、警視庁に相談した。
=違法行為後絶たず 摘発強化も有効手段なし=
テレビの有料放送を視聴するためのB-CASカードを巡っては不正改造など違法行為が後を絶たず、警察は摘発を強化してきた。有料放送事業者なども対策を講じているが、有効な手だてがないのが現状だ。
「すべての有料放送が無料で見放題になる不思議なB-CASカードをお手頃価格にて絶賛発売中!」。インターネット上のあるホームページでは今でも、不正改造とみられるカードが1枚1万8千円で販売されている。
捜査関係者などによると、カードの改造方法などは2012年ごろからネット上で広がったとされる。全国の警察は同年以降、カードを改造したり、違法カードを販売したりしたとして不正競争防止法違反容疑などで摘発してきた。
だが最近は、有料放送を無料で見られるチューナー本体を販売したり、今回の事件のようにカードを使わずに視聴できる不正プログラムを公開したりする新たな手口で摘発されるケースもある。
有料放送を見るためには、各放送事業者が自ら設定する暗号キーが必要となる。事業者は不定期に暗号キーを変更し、不正に視聴できないよう対策を取っているとされる。だが、設定するたびに解析され、ネット上に公開されているという。
ある捜査関係者は「B-CASの不正利用は次から次へと新たな手口が出てくる。今後も摘発を強化するしかない」と話した。
■B-CASカード デジタル放送を視聴するためのICカード。テレビや録画機器を購入すると付いてくる。未契約の状態で有料のBSやCSの番組を見ようとしても視聴制限がかかっているため映らない。有料放送の契約をすると、カードの中に契約期間や視聴可能な番組の種類などの情報が書き込まれ、番組が見られるようになる。
【関連記事】
・=論説= 教育情報不正接続
・不正アクセス 生徒や保護者へ再度説明を
・教育情報不正アクセス、7生徒が流出情報共有
・成績管理システム、21万件不正入手 佐賀の少年再逮捕
・佐賀県立中高9校が被害 佐賀県教委、1万人分まで確認
・成績まで流出、学校動揺 生徒「二次被害怖い」
・教育システム侵入 高校生15人に聴き取り
・カード使わずTV無料視聴 佐賀市の少年逮捕
・県立高タブレット導入1年 教員、生徒「四苦八苦」
・タブレット端末、県立高導入まで2カ月