原爆で犠牲になった同級生の慰霊碑に手を合わせ、祈りをささげる中野隆三さん=伊万里市の伊万里実業高

慰霊碑の前で手を合わせる生徒=佐賀市の佐賀商業高

 「長崎原爆の日」の9日、佐賀県内でも被爆者の慰霊祭が行われた。学徒動員で生徒が犠牲になった伊万里実業高(伊万里市)と佐賀商業高(佐賀市)では同級生や生徒らが鎮魂の祈りをささげ、戦争のない平和な世界をつくることを誓った。 

 

 ○…伊万里実業高(当時は伊万里商業学校)では、同級生や学校関係者ら約15人が犠牲になった生徒13人の霊を慰めた。原爆が投下された午前11時2分に合わせて黙とうをささげた。

 牧瀬省吾校長が「原爆の犠牲となられた皆さまの無念と、志半ばで果たせなかった夢や希望への思いを胸に、毎日を懸命に生き抜くとともに体験や平和への思いを学び次世代につないでいく」と述べ、生徒会長で2年の井上泰虎(だいご)さんは「私たち一人一人が先輩方のみ霊が安らかになるような世の中を築くために努力する」と誓った。

 参列した唯一の同級生中野隆三さん(94)=伊万里市=は「同級生は無念な思いで亡くなったと思う。後輩たちには、その犠牲を無駄にしないように努め、世界平和をつないでいってほしい。核で平和にはならない」と訴えた。(丸山美陽)

 

 ○…生徒5人が犠牲になった佐賀商業高(当時は佐賀商業学校)の慰霊祭では、卒業生や教職員、生徒ら約30人が鎮魂の祈りをささげ、不戦の誓いを新たにした。

 長年、慰霊祭に出席していた同級生の斎藤実さん(95)=佐賀市=が入院しているため、同級生が参加しない初めての慰霊祭となった。

 生徒会長で3年の森田峻世さんは「もし自分のクラスメートが原爆の被害に遭ったら」と想像しながら黙とうしたといい、「皆さんがつないできた平和な世の中を大事にしていきたい」と話した。

 戦後、同級生が慰霊祭を続け、1976年に同校の敷地内に慰霊碑を建てた。高齢化のため2014年から同窓会が慰霊祭を主催している。(中島野愛)