<2024年8月1日朝刊掲載のAI佐賀新聞>

※佐賀新聞朝刊の1カ面を生成AIを使用して作成

<AI佐賀新聞、こんな感じで作りました>

生成AIで記事を作成するには、具体的な指示「プロンプト」の入力が必要です。「2045年8月1日、佐賀市で最高気温45度を記録した」という想定で、報道資料から速報記事をつくる過程をチャートにしました。

 

<AI佐賀新聞・社長あいさつ文の生成過程>参考に“本物”のデータ入力、1分で文章完成

 32面に掲載した「AI佐賀新聞社長 中尾ai一郎」のあいさつ文も、生成AIを使って書きました。生成過程を説明します。

 あいさつ文を書く前提の素材として“本物の”中尾清一郎社長が社員向けに書いているブログと、過去に紙面掲載したあいさつ文を読み込ませました。また、創刊140周年で制作した「新聞はオワコンなのか?」と問いかけるポスター=写真=には、社長の考えが色濃く反映されており、そこに書かれたテキストも学習させました。

 

 これらの素材を使い、あいさつ文を書くための指示文に当たる「プロンプト」を入力。実際の文章が生成されるまでの時間は約1分でした。その後、記者がプロンプトを通じて生成AIとやり取りしながら細かい修正を加えました。

【写真説明】現在の中尾社長の写真を元に、生成AIが約20年後の姿を予想し制作した画像。複数の中から選んだ。

 顔写真は、文章を書いた生成AIとは違う種類の生成AIを使っています。プロンプトでは「20年後の姿に」「年相応に」といった条件を入力し、生成された複数の顔写真から選びました。

<「AI佐賀新聞」作成の意図と考え方>進化に大きな可能性、課題踏まえ活用

 生成AIの登場で、社会は大きく変わろうとしています。生活のあらゆる場面で利用が始まり、より便利になると期待される半面、権利侵害や法整備の遅れなどさまざまな問題も浮かんでいます。佐賀新聞社はこの技術革新に大きな可能性を感じており、その特性をきちんと理解した上で、適正に活用する方針です。

 生成AIについては4月から社内論議を始め、6月から試験的に使い始めました。記事を書かせたところ、正確性を欠く内容が散見され、そのまま使うには危ういことや、著作権を侵害しないよう注意する必要があることを学びました。

 今回、生成AIを使って佐賀の未来を描いた記事を初めて紙面に掲載しました。掲載に当たっては、生成AIがリサーチした資料の出典元を記者が全て確認するなど細心の注意を払いました。一方で、現時点での生成AIの“実力”をみてもらうため、生成物の文章に手を加えることは最小限に抑えました。

 使い始めて約2カ月。この間にも、生成AIは飛躍的なスピードで進化していくのを実感しました。佐賀新聞社は、ニュースの信頼性を担保する仕組みを構築する「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」に地方紙として最初に加盟するなど、デジタル分野での先進的な取り組みを進めています。

 生成AIの利用に当たっても、法律や権利を守り、「そのまま使わない。必ず人が確認、修正する」ことを鉄則にした内規を定めました。今後は講演で採録した音声データの文字起こしや要約のほか、見出しの作成、校閲支援などに利用を広げていく方針です。(コンテンツ部長 林大介)

<記者の目>付き合い方、体感して見定める

 ちょっと風変わりな新人が入ってきたようだ。

 とにかく仕事が速く、とりわけ退屈な作業でこそ驚異的な力を発揮する。通常は録音時間の3~5倍はかかる文字起こしを、インタビュー時間の5分の1ほどで済ませる。データの整理や分析もお手の物だ。

 AIを使うリスクを尋ねても「誤情報を生成する『ハルシネーション』が―」と、自らのマイナス要素にためらうそぶりもない。生成した記事で記者の思惑と違う箇所を指摘すると「申し訳ありません。修正します」と謝るのに、平気で修正しないままの原稿を出してくることもある。人間のようで、明らかに違う。そんなときほど、ありもしない「涼しい顔」を見たような気分になる。

 もちろん万能ではない。リサーチ(下調べ)能力はウェブ上の情報に限られる。生成物は及第点だが、特にコラムは人が書いたものの味わいに及ばない。真っ赤なうそを出力したり、「ディープフェイク」と呼ばれる偽の画像や動画、音声が詐欺などの犯罪やプロパガンダに悪用されたりしている実態もある。

 ただ、その能力はまだ底が知れず、さらなる高性能化や機能拡張、検証技術の向上も進むだろう。

 今回は生成AIの実力を伝えようと、記事を丸ごと書かせるという使い方をしたが、付き合う中で「能力を引き出す使い方」が体感的に分かってきた気がする。もっと有効な活用法も、課題も、そのリテラシーが必要な時代がもう来ていることも。(コンテンツ部 志垣直哉)

<生成AIをめぐる利用と規制>EUは世界初「規制法」制定 新聞協会、著作権への懸念表明

 急速に進歩する生成AI(人工知能)を巡っては利用が広がる一方、使い方によって社会への悪影響も懸念され、規制に向けた動きもある。

 デジタル庁は昨年度、生成AIの技術検証を実施し、業務の効率化に活用している。地方自治体でも、埼玉県戸田市や神奈川県横須賀市がチャットGPTの活用を進めるなど、業務への導入が模索されている。

 広がる理由は、その多様な用途にある。文書作成の自動化、データ分析、翻訳、アイデア出しなど、幅広く活用できる。横須賀市が職員に実施した任意回答のアンケートによると、8割超の職員が業務効率化の効果を実感しているという。

 一方で、利用には懸念すべき点もある。主な問題は、機密情報や個人情報の取り扱い、AIが誤情報を生成する「ハルシネーション」、著作権侵害などだ。

 欧州連合(EU)は5月、世界初とみられる包括的なAI規制法を制定した。AIシステムを利用目的やリスクに応じて分類し、それぞれに規制を設けている。たとえば、社会的行動や個人の特性に基づく信用格付け(ソーシャルスコアリング)や、インターネットや監視カメラからの無差別な顔の画像収集などへの利用を「許容できない」と禁止。また「高リスク」のシステムには、リスク軽減やログ管理、正確性などの厳格な要件を求めた。

 さらに、生成AIなどの「汎用目的型AIモデル」には透明性や著作権法遵守を求め、中でも一定の利用者数を超えるなど影響力の大きなモデルの場合、重大インシデント発生時の報告義務などを課す。違反への罰則も設けた。

 日本では、政府がAI制度研究会(仮称)の設置を進めている。一方、日本新聞協会は、報道コンテンツの著作権をめぐる懸念を繰り返し表明している。ウェブ上の検索に連動させてAIが回答を生成する検索拡張生成(RAG)などにより、記事を不適切に転用・加工されていると指摘。生成AIサービスの提供事業者に対し、著作権者の許諾を得ることや正確性、信頼性を確保すること求め、政府に法整備を訴えている。