災害対策をテーマに恵寿総合病院の神野正博理事長が講演した=佐賀市の佐賀メディカルセンター

災害対策をテーマに講演した恵寿総合病院の神野正博理事長=佐賀市の佐賀メディカルセンター

 1月の能登半島地震で被災した石川県七尾市にある恵寿総合病院の神野正博理事長が18日夜、佐賀市で講演した。以前から進めてきた災害対策や医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)が、発災後も医療を継続する上で重要な役割を果たしたことを振り返り、備えの大切さを呼びかけた。

 恵寿総合病院は426の病床、25の診療科があり、職員約800人が働いている。1990年代からバーコードによる物品管理などを始め、2017年に患者が診療結果をスマートフォンで確認できる「パーソナルヘルスレコード」、23年に業務用スマホ520台を導入している。

 神野氏は講演で「(人口減少が進んでいる)能登半島では職員を集めることが難しく、早くから働き方改革やDXに取り組んで少ない人数でも回せる仕組みをつくった。それが震災時に役立った」と語った。

 07年の能登半島地震などを教訓に免震構造や液状化対策を取り入れた本館は地震による破損がなく、発生翌日の1月2日から出産や外科手術に対応し、同4日から外来患者も受け入れた。業務については「カルテも連絡もスマホでできるようにしておいた。これがとても大きかった」と説明した。

 震災を機に能登半島からの人口流出が加速している点を指摘し、まちづくりや復興の在り方を考える重要性にも触れた。

 佐賀県病院協会(織田正道会長)が主催し、県内の医療関係者ら約90人が聴講した。参加した病院経営者は「佐賀の医療機関も、もっと災害対策を進めていく必要があると感じた」と話した。(円田浩二)