幕末佐賀藩の科学技術の発展にも影響を与えた江戸時代の数学「和算」について学ぶ講演会が6日、佐賀市の佐賀城本丸歴史館であった。近世日本数学史家で電気通信大の佐藤賢一教授が、佐賀藩士と和算との出合いや暦作成などの成果について語った。
佐藤教授は、ベストセラーになった吉田光由の算術書「塵劫記(じんこうき)」を題材に、そろばんの普及を背景にした江戸時代の和算の発展について話した。塵劫記は海賊版が次々に出回ったため吉田は答えのない12問を載せた本を出したが、問題を解いたという算術書が出版され、さらにその著者が読者に問題を出した。佐藤教授は「こうした知的な連鎖が人々の数学レベル向上につながった」と解説した。
和算が扱う分野は入門的な内容から代数・幾何など高度な問題まで幅広く、応用分野の一つに佐賀藩が先進的な取り組みをした砲術もある。佐藤教授は佐賀藩士の算術習得について、「長崎警備との関わりから、長崎に伝来した沢口流の和算と接触した可能性もある」と指摘した。
藩随一の算術家馬場栄作が、幕府の策定よりも先に暦を作成したことにも触れた。馬場の暦に記されている月食の日付がNASAのシミュレーションと一致しており、当時の数理処理能力が高かったことを紹介した。(福本真理)