積乱雲が次々と風に流されて線状に連なり、局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」。佐賀県内でも毎年のように発生し、深刻な被害が出ている。気象庁は災害への備えや避難に役立ててもらおうと、発生する可能性を知らせる「半日前予測」を実施している。今年の出水期から、発表地域をより狭めた府県単位での運用が始まる。
線状降水帯は、同じ地域に数時間にわたって積乱雲がかかり続けるため、局地的な豪雨をもたらし、河川の氾濫や土砂災害の危険性が急激に高まるとされる。佐賀県内でも度々発生し、2023年7月には唐津市浜玉町で土石流が起こって3人が亡くなった。
気象庁は、発生する可能性を12~6時間前に伝える「半日前予測」や、最大30分前の「顕著な大雨に関する気象情報」で警戒を呼びかけている。22年6月から始まった半日前予測は九州北部、九州南部・奄美、関東甲信、東海、近畿、中国など全国を11に分けた地方ごとに出してきた。今月28日からは府県単位で運用し、面積が広い北海道や東京都の島しょ部などは分けて発表する。
府県単位の実施は、新たなスーパーコンピューターの導入により、予報時間を10時間から18時間に延長した2キロ四方ごとの計算が可能になったことなどで実現した。今後も範囲を市町村単位に絞るなど改善していく方針。
気象庁によると、情報が出た場合に、実際に線状降水帯が発生する精度は、4回に1回程度。発生するかどうかにかかわらず、3回に2回程度は3時間で100ミリを超える大雨が降る恐れがあるという。事前に予測情報が出せないまま発生する「見逃し」は従来より減り、2回に1回程度と想定している。
線状降水帯に関する情報だけでなく、気象注意報や警報、土砂災害警戒情報など段階的な情報と併せて活用することが重要になる。佐賀地方気象台は「線状降水帯は発生すると災害の危険度が一気に高まる。さまざまな情報を活用して早めの避難を心がけてほしい」とし、災害発生の危険度を示す気象庁のサイト「キキクル」の活用を呼びかけている。
土砂災害警戒情報は避難が必要な警戒レベル4に相当し、市町村による避難指示や住民の自主避難の目安となっている。