有田焼の魅力である繊細な絵柄。それを生み出す絵付け師の筆が数年前、手に入らなくなることがあった。筆の名産地の広島県熊野町から半世紀にわたり行商に来て、多くの窯元に納品していた業者が、職人の高齢化で生産を中止した。

 器を窯で焼く際の下敷きにする「ハマ」の製造業者も、2年ほど前に廃業した。ハマは器のゆがみを抑える役割があり、薄作りが特徴の有田焼でよく使われる。両業者の撤退が製造現場に与える影響は大きく、窯元の組合が新たな仕入れ先探しに奔走した。

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 近年、有田焼産業を裾野で支えてきた業者が、くしの歯が欠けるように業界を去っている。分業制の維持が難しくなり、窯元が外注から内製化に切り替える動きも起きている。