木べらですくう須古寿司に主菜、副菜、サラダ、吸い物、漬物、デザートががつくランチセット。アスパラガスやタマネギ、テンペなど白石の味が楽しめる

キャラメルチーズケーキなどの手作りスイーツ(400円)。飲み物とのセットで700円

店主の江口智子さん(左)と長男の歩さん

いつでも気軽に須古寿司が食べられる「とこのとこ」=白石町堤

 白石町堤の須古地区に伝わる郷土料理「須古寿司(すこずし)」を、いつでも手軽に食べられる店「とこのとこ」が地元にオープンした。スーパーや道の駅の店頭、飲食店のコース料理の一品ぐらいでしか普段は食べる機会がなかったが、定番メニューとして味わえるようになった。「ふるさとの味を守り、伝えたい」と一念発起した江口智子さん(48)。「来町者や地域の人が集う場にも」という思いも込める。

 須古寿司は500年以上前、米の品種改良に尽力した領主に感謝した領民が、地元の海の幸や山の幸で寿司を作り、献上したのが始まりとされる。米にもち米を1割加えて塩とだし昆布で炊き、酢飯にしてもろぶた(木箱)に詰める。四角に切れ目を入れ、ムツゴロウの甘煮やシイタケ、ゴボウ、ニンジン、錦糸卵、奈良漬などを載せる。祭りや祝い事のふるまい料理として受け継がれてきた。

 福岡育ちの智子さんは須古出身の夫英樹さん(50)と結婚、移住し須古寿司と出合った。親子料理教室をきっかけに作るようになり、管理栄養士で学校の講師を務めていたこともあって中学生の実習の“先生”を担うことに。今ではテレビにも出演して、伝統の寿司を解説している。

 ただ、伝統の料理も先行きは不安がある。須古地区でも食べたことのない子が38%、家で作らない家庭は76%という小学生の調査もあった。仕出し店は残り1軒に減った。食べたい時に食べられる店がなく、智子さんは「いつでも、誰でも、気軽に食べられる場所を」と自宅の小屋を改造して3月末にオープンした。長男の歩(あゆむ)さん(21)と切り盛りする。

 メニューは須古寿司に日替わりの主菜と町特産のテンペや野菜を生かした副菜、サラダ、吸い物、デザート付きの2千円のランチのほか、キャラメルチーズケーキなどのおやつ(400円)やドリンクもある。落ち着けばプレートランチ(1500円)も始める。

 智子さんは「野菜はほぼ白石産。旬に合わせたメニューを提供したい。木べらですくって皿によそって食べるという須古寿司ならではの食べ方も楽しんで」と来店を呼びかける。提供数に限りがあり、予約が確実。(小野靖久)

〔住〕白石町堤624―1(須古駐在所隣)
〔営〕11時半~17時、金・土曜は22時までで大皿料理を並べてアルコールも提供。
〔休〕月、火曜
〔電〕090(3413)3245