2年間限定で発行してきた季刊誌『散文誌 隣り村』(発行人・八田千恵子さん、古小烏社)の終刊号に当たる第8号が出版された。
巻頭は佐賀新聞社の元記者で、脚本家の本山航大さんの小説「むしやしない」。悩みを抱えた人たちの電話相談の仕事をしている「わたし」が主人公で、「眠れない夜ではなく、眠りたくない夜がある。(略)明けない夜はないだとか、そんなことが言えるのはあしたがきょうよりいい一日になると思い込んでいる人だけだ」と書き出す。
表紙は佐賀市の画家服部大次郞さんによる「ぺちゃ」(めんこ)で、神社の境内でめんこ遊びに興じる子どもたちを描いた。その表紙裏は、森正洋デザイン研究所代表の筒井泰彦さんのエッセーで、ぺちゃを「ランドセルに詰めて、当時、町は炭砿で栄えていて炭住に住む同級生も多かったから、下校途中、炭住の路地などで彼らと競ったものだ」と懐かしむ。
連載「『戦後』を読み直す」を執筆してきた福岡市博物館総館長の有馬学さんは「休載の弁」を掲載した。弁解とともに「言ってもいいよと言われたのでここに書くが、『別巻』があるのだそうである。ともかく、それに救っていただけることになった」と明かしている。別巻は6月1日に発行する予定。(古賀史生)
▼『散文誌 隣り村』終刊号はA5判、163ページ。税別700円。佐賀市の紀伊国屋書店佐賀店でバックナンバーも含めて取り扱っている。