白磁の人間国宝(重要無形文化財保持者)の陶芸家、井上萬二さん(95)=西松浦郡有田町=と孫の祐希さん(35)との初めての2人展が27日、福岡市の大丸福岡天神店アートギャラリーで始まった。萬二さんが信条としてきた雑味や雑念を排した作陶の境地「名陶無雑」の精神を受け継ぐ覚悟を示している。4月2日まで。
同ギャラリーでの展覧会は長男の故康徳さんとの2人展以来、12年ぶり。「萬二窯 受け継がれる『名陶無雑』の精神 そしてその先の未来へ~人間国宝 井上萬二・祐希展」と題し、萬二さんが約100点、祐希さんが約30点を出品した。
萬二さんは耳付きの花瓶をはじめ、渦巻や花型など造形の美を追求した白磁に加えて、桐や椿を白磁の全面に彫り込んで緑の釉薬を施した壺などを出品している。
一方、祐希さんは祖父の作風とはまったく異なる深い黒を生かした天目の花器や、現代的なデザイン性の高い作品を並べている。
会場を訪れた萬二さんは「白磁は完璧でなくてはならず、たった一つのピンホールも許されない。孫には『私が死ぬまでは作風をまねすることなく、自分の表現を自由に目指せ』と伝えている」と話す。祐希さんも「こうした機会を設けてもらい感謝している。祖父の姿勢や技術をしっかり見習って受け継ぎたい」と決意を語った。(古賀史生)