長い距離を走っているとき、何を考えているだろうか。散歩をするのがせいぜいで、ランナーの心境は分からない。ロサンゼルス五輪(1984年)の女子マラソン日本代表だった増田明美さんは、同様の質問をよく受けるという◆増田さんは「新幹線の車窓から景色を眺める。調子がいいときは、まるでこんな感じ。考えるというよりも、ただただ沿道の流れる風景が目に入る」とエッセーに書いていた。引退後、俳句を始めてからはジョギングをしながら詠んでいるという。“ジョグ俳句”と名づけて楽しんでいるそうだ◆「さが桜マラソン2024」があす24日、新装された佐賀市のSAGAサンライズパークを発着点に開かれる。フルマラソンとファンラン(約10キロ)に、全国各地から約1万人のランナーがエントリー。多布施川沿いの桜並木や吉野ケ里歴史公園などを駆け抜け、佐賀の春を楽しむ◆自己ベストの更新を狙うフルマラソンのランナーは、車窓から景色を眺めるように走るのだろう。ファンランの参加者はジョグ俳句を詠むように、自然を感じながら心地よく汗を流すのだろう◆増田さんはエッセーの中で、埼玉県のウオーキング大会に招かれた際の句を披露していた。〈彩の道 足並みそろえ 花いかだ〉。散った後の景色も季語になる桜。開花の知らせは、すぐそこに。(知)
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