「Dr.スランプ」 鳥山明 集英社/1巻484円(©バード・スタジオ/集英社)

 鳥山明さんが、68歳という若さで亡くなられた。

 何ということだ…書店員と出版社、そして本好きが多くを占める私のSNSには、訃報を受け、嘆き悲しむというよりも、呆然としているかのようなポストが並んだ。

 Dr.スランプ、ドラゴンボール、そしてドラゴンクエストやクロノ・トリガーのキャラクターデザイン。私たち世代は、漫画も、アニメも、そしてゲームも鳥山明さんの絵で体験した。記憶にある限り、初めて好きになったキャラクターはDr.スランプのアラレちゃん。アニメを見て、アニメの音声と主題歌などが収録されているカセットテープを購入してもらい、暗記するまで聴いた。クリスマスプレゼントには大きなアラレちゃんの人形をねだった。当時東京に住んでいたのだが、父は、いわく「東京じゅうのおもちゃ屋さんを駆けずり回って探した」がアラレちゃんは入手できず、ガッちゃん(同じくDr.スランプのキャラクター)の人形を購入して帰宅した。プレゼントを開けた私が「…なーんだガッちゃんか」と人形を放り投げ、見向きもしなかったというエピソードは、クリスマスといえば…で始まる我が家の傑作エピソードの一つとして今も語り継がれている。その後、詳しい経緯は忘れたが、アラレちゃんの人形は無事に我が家にやってきた。おそろいの帽子とメガネでアラレちゃんになり切った私と並んだ写真は、古いアルバムに収まっている。

 Dr.スランプのコミックスは今も私の家の本棚にあり、幾度も読み返されてボロボロになっている。絵がうまいとされる漫画家さんはたくさんいるが、最先端の表現と並べて改めてDr.スランプを読んでも全く古さを感じないし、見開きカラーページのデザインには驚きさえする。本当に漫画の神様のような方だと思う。

 本の紹介をするこのコラムだが、今回ばかりはお許しいただきたい。鳥山明さんからいただいたものが、あまりにも大きすぎるから。

本間悠さん

2023年12月、佐賀駅構内にオープンした「佐賀之書店」の店長。自身が作った売り場や本のポップなどで注目を集め、SNSのフォロワー数は1万人以上。多メディアにおいても幅広く活躍中

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