繰り返し頭痛を訴えるこどもの中に片頭痛のこどもがいます。「片頭痛って大人の病気じゃないの?」と思われるかもしれませんが、子どもにもあります。

 強い頭痛を繰り返し訴えるときは片頭痛を疑います。罹患(りかん)率は小学生、中学生、高校生と成長するにつれて高くなり、中学生以上では男子より女子に多いことが報告されています。片頭痛には前兆がある場合とない場合があり、前兆がある場合、多いのは目の症状です(目の中に光る点が見えだんだん拡大する「閃輝暗点」など)。前兆に引き続き拍動性の頭痛が起きます。このような典型的なタイプは診断しやすいのですが、前兆がない場合は診断に迷うことがあります。

 片頭痛は、(1)長時間継続する片側の拍動性の発作性頭痛で、(2)体を動かすと強くなり、(3)光や音に敏感になるため静かで薄暗い部屋でじっとすることを好み、(4)吐き気・嘔吐(おうと)を伴うという特徴があります。しかし、子どもでは必ずしも片側性、拍動性ではなく、両側であることも多いようです。頭痛の継続時間も数時間程度で大人に比べて短いことが多いです。吐き気や嘔吐のため急性胃腸炎と誤診されることもあります。子どもは症状を言葉で上手に表現できないことも多く、大人とは多少症状も異なっていますので、症状の特徴を上手に聞き出すことが大事です。

 片頭痛は血管が急に収縮・拡張するために起きる機能的な障害(1次性頭痛)で、重大なものではありませんが、脳腫瘍などの重大な病気を見逃さないことは大事です(別の病気が原因で起こる頭痛は2次性頭痛といいます)。

 治療は痛み発作に対する急性期の治療と、痛み発作を予防する治療法があります。子どもではまだあまり使われていませんが、大人ではとても有効な予防治療も開発されています。痛みが始まったらできるだけ早く解熱鎮痛剤を内服します。通常の解熱鎮痛剤で効果がない場合、頭痛発作の頻度が多くて生活に支障をきたす場合、予防治療を希望するときは小児神経の専門医にご相談ください。

 

浜崎 雄平(はまさき ゆうへい)
佐賀整肢学園 からつ医療・福祉センター顧問。佐賀大学名誉教授。
1948年、鹿児島県日置市生まれ。九州大医学部を卒業し、テキサス大やオクラホマ大研究員などを歴任。
84年から佐賀医大(現佐賀大学医学部)小児科講師として勤務し、00年に同大小児科学教授就任、09年から医学部長を兼任する。
14年から現職。専門分野は小児の呼吸器/循環器疾患、アレルギー疾患。

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