地震など大規模な災害が起きると回線が混雑して被災地との連絡が取りづらくなる。自分の状況を周囲に知らせたり、家族や知人の安否を確認したりする手段として、伝言ダイヤルやスマートフォンのアプリが役立つ。(円田浩二)

雪の中、大規模な火災のあった石川県輪島市の「輪島朝市」付近で、安否不明者の捜索活動に向かう消防隊員ら=7日午後3時56分

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 被災地への電話が殺到するとつながりにくくなり、現地での緊急の電話を妨げる恐れも生じる。総務省によると、2011年3月の東日本大震災では、発生直後に最大で平常時の50~60倍以上の通話が一時的に集中したという。

 災害時に各通信事業者が提供する「災害用伝言ダイヤル(171)」を活用すれば、被災地の回線の負担にならない形で伝言の録音・再生ができる。

 

 音声案内に従い、伝言を残したい人は自宅の固定電話や自分の携帯電話の番号を入力して録音、伝言を聞きたい人は相手の番号を入力して再生する。30秒以内の伝言を20個まで残すことができる。4桁の暗証番号を設定すれば、再生できる人を限定できる。伝言ダイヤルは毎月1日と15日に体験利用できる。

 文字情報による「災害用伝言板」では、スマートフォンなどから安否情報の登録、確認ができる。

 佐賀県のアプリ「防災ネットあんあん」は、防災や防犯といった幅広い情報をスマホで得られる環境を整えている。「安否情報」の機能では、家族や知人などアプリ利用者のIDを10人まで登録できる。強い地震が発生した際などに「無事です」「自宅にいます」といった状況を選択肢から選び、メッセージも添えて一斉送信する。

 国は昨年3月、災害時の安否不明者の氏名を公表すると明記した自治体向けの指針を示した。公表を通じて安全な場所にいる人をすぐに確認し、捜索の対象者や場所を絞り込んで速やかな救助活動につなげる狙いがある。佐賀県も「救える命を救う観点から原則、躊躇(ちゅうちょ)なく公表する」としている。

災害時のデマ、課題に

 

 災害発生時に、交流サイト(SNS)に虚偽の情報が投稿される事例が後を絶たない。元日に発生した能登半島地震では、被災地で投稿された虚偽の救助要請によって消防が出動したケースが確認されている。

 2016年4月の熊本地震では「ライオンが逃げた」と不安をあおる悪質なデマが広がった。大きな災害が発生するたびに、デマの拡散に対する対応が課題になっている。急速に発達している生成AI(人工知能)を悪用するケースも懸念されており、情報を読み解く力がこれまで以上に求められている。