“奇想の画家”として知られる江戸時代の京都の絵師長沢芦雪(ながさわ・ろせつ、1754~1799年)の生誕270年を記念した特別展「長沢芦雪~若冲、応挙につづく天才画家」(佐賀新聞社など後援)が、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開かれている。
芦雪は、「写生画の祖」と呼ばれる円山応挙の高弟として頭角を現し、奇抜な着想と大胆な構図で独自の世界を展開した。その画風は写実を重んじた師匠とは大きく異なる。美術史家の辻惟雄氏が1970年、著書『奇想の系譜』で同時代の若冲や曾我蕭白らとともに「奇想派」に位置付け、近年の再評価につながっている。
芦雪の大規模な回顧展は九州では初めて。大阪に続く巡回展だが、展示内容を大幅に変更した。芦雪に加えて、若冲や応挙、与謝蕪村、池大雅らの作品も展示している。国重要文化財11件を含めた64件で構成し、3月3日までの前期と、3月5日からの後期で展示内容をほぼ入れ替える。
前期展示では、和歌山・無量寺の「龍・虎図襖」をはじめ、厳島神社に納められた「山姥図」、厳島神社の四季を描いた「宮島八景図」(いずれも国重文)などを公開している。
このうち、無量寺の「龍・虎図襖」の龍は、稲妻が光る黒雲を3本の爪で切り裂く迫力ある姿。一方の虎は、たけだけしさよりも愛きょうのあるネコのように描いている。無量寺は1707年の宝永の大地震による津波で壊滅しており、芦雪の襖絵は復興のシンボルでもあったという。
富田淳館長は「九州では初めての芦雪の大規模な回顧展でもあり、名品中の名品をそろえた。芦雪と同じ時代の巨匠たちとともに楽しんでもらいたい」と話している。(古賀史生)
▼特別展「生誕270年 長沢芦雪~若冲、応挙につづく天才画家」は3月31日まで、福岡県太宰府市の九州国立博物館で。