
厚労省による人口動態調査の2016~20年10年間の統計によると、事故による子どもの死亡原因は溺水が窒息に続いて2番目に多く(交通事故死を除く)、2020年には49人が溺水で亡くなっています。長期的には溺水の死亡数は明らかに減少していますが、最近は頭打ちの状態になっています。知ってもらいたいことは、子どもの事故死の多くは住居の中で起きているという事実です。溺水についても3歳以上になると住居外(川、海、プールなど)も増えてきますが、2歳まではその多くが浴室で起きています。ちょっとした油断や不注意のため自宅で事故が起きていることや、命は助かっても重い障害を残した子どもたちが数多くいることを忘れてはなりません。
今回は米国小児科学会が“子どもの溺水予防のために養育者が知っておくべきこと”として示した注意事項を書き出してみます。まず、浴室での注意として(1)浴室に子どもが一人で入ることができないように工夫すること(扉の上部に鍵をかけるなど) (2)子どもだけで入浴させないこと (3)残し湯はしないこと(5cmでも溺れる可能性がある) (4)浴槽で浮き輪を使用しないこと (5)こどもは溺れるとき声を出さないことを知っておくこと(静かに溺れるので音は頼りにならない、後ろ向きにならず、常に子どもを見ながら行動する)。
プールや戸外での注意として(1)幼い子どもを一人で、または子どもたちだけで遊ばせないこと (2)乳幼児や泳げない子どもは大人の腕がとどく範囲で監視すること (3)水遊びをするとき、すべての子どもと大人はライフジャケットを着用すること (4)救命のための心肺蘇生法を習得すること (5)子どもに溺水予防教育を行うこと(ライフジャケットの必要性や、ボールや大事な持ち物などが流れても放置することを徹底して教えこむ、着衣水泳の練習:泳がず、移動せず、その場で呼吸しながら浮く方法を習得させる) (6)救助者は、救助に際して自分の安全を確保し、道具(浮き輪やペットボトル、ロープなど)を使うことが示されています。
●浜崎 雄平(はまさき ゆうへい)
佐賀整肢学園 からつ医療・福祉センター顧問。佐賀大学名誉教授。
1948年、鹿児島県日置市生まれ。九州大医学部を卒業し、テキサス大やオクラホマ大研究員などを歴任。
84年から佐賀医大(現佐賀大学医学部)小児科講師として勤務し、00年に同大小児科学教授就任、09年から医学部長を兼任する。
14年から現職。専門分野は小児の呼吸器/循環器疾患、アレルギー疾患。