< 鯛せん >

佐賀市中の小路、佐賀玉屋のほど近くに1月1日、和食店「鯛(たい)せん」がオープンしました。店主は、佐賀市内で「のなかの」「梟の響キ」を営む料理人・野中彰二さん。和の料理人として活躍した父の思いを受け継ぎ、かつて父の店があった場所で、同じ「鯛せん」の看板を掲げます。

野中さんの父・野中啓次さんは、約50年前に同所に割烹料理店「鯛せん」を開店。野中さんは、幼い頃から父の背中を追いかけ、自らも料理の道へと進みました。父の引退とともに「鯛せん」は閉店しましたが、野中さんの中には長年、父の店の味を次世代に残したいという思いがあり、今回、本格和食がカジュアルに味わえる新しいスタイルの店として、「鯛せん」を復刻オープンしました。

看板メニューは、父の店の名物だった「鯛めし」をメインにした「佐賀鯛めし膳」。“始末のよい料理”という考えを念頭に、身はもちろん、アラ、骨まで鯛を余すことなく使います。「一の膳」は、「季節の先附(さきづけ)」に、三原豆腐(鹿島市)の豆腐「雪の音」、有明海の幸を詰め込んだ「有明茶碗蒸し」、ドレッシングで食べる「旬の炊き合わせサラダ」。


「二の膳」として、選べる鯛めしと鯛の潮(うしお)汁が登場します。飲食店の経営のほか、県内外の店舗プロデュースや商品開発、メディアへのレシピ提供など幅広く活躍する野中さん。その経験を生かし、「海」「土」「空」、3種類の鯛めしを考案しました。


「海」は、愛媛県宇和島の郷土料理をイメージ。鯛の薄造りに、本間農園(神埼市脊振町)の卵、だししょうゆを合わせ、ご飯と共に味わいます。「空」は、カラリと揚げた鯛の天ぷらと有明真エビのかき揚げに甘めのたれをかけて食べる天丼風。「土」は、鯛の骨を丁寧に煮詰めただし、鯛の切り身で炊き上げる土鍋ご飯。三種三様の楽しみがあります。


店のしつらえにも、随所に野中さんのこだわりが光ります。店頭には、県出身の書家が書いた看板代わりの書に、虹の松原(唐津市)をイメージした松。無垢(むく)の一枚板を使用した重厚なテーブルには、輪島塗の古物のお膳に、特注したという鯛を模した唐津焼の箸置き。有田焼、唐津焼を中心とした華やかな器の数々が、料理をより引き立てます。

2階には大きなセラーを設置。県内すべての蔵元から、約100種の日本酒を取りそろえています。一の膳とともに、ぜひ佐賀の酒を味わってください。県外から訪れた人のおもてなしとしても喜ばれそうです。料理は、「佐賀鯛めし膳」のほか、予算に応じて相談も可能です。

「佐賀の食材、九州の食材にこだわり、聞き慣れた“地産地消”というフレーズに、いま一度薪をくべたい。そして料理人として、商い人として自分を育ててくれた佐賀に、料理を通じて恩返しをしていきたい」と野中さん。その思いは、この店の空間、ここで過ごす時間、出される料理のすべてから感じ取ることができます。

店は、昼から夜まで通しで営業。今後、喫茶の営業も視野に入れているといいます。友人同士のカジュアルな集まりから、大切な人との記念日、県外からのお客さまのおもてなしまで、さまざまなシーンで利用できそうです。(岩永真理子)
DATA
住/佐賀市中の小路4-16
電/0952-97-8113
営/11:00-21:00(20:00L.O.)
休/不定 ※SNSで確認
駐/なし
IG/taisen_saga