麦の芽が伸び、冬枯れの平野に緑が広がってきた。春へと向かう佐賀の風景だが、県西部を通っていると、真っ黒な旗が何本も立っているのが目についた。「吹き流し」と呼ばれる食害対策で、シートを風になびかせてカモを追い払う◆白石町や江北町など六角川流域では食害が急増しており、県も対策に乗り出している。ロケット花火やベストを着せたマネキン、ドローンなどを使い、「追い払い」「侵入防止」「捕獲」とさまざまな作戦を試行。色や高さ、長さも変え、有効な策を探るという◆県のまとめによると、昨年度のカモによる農作物被害は3115万円。2020年度から急増し、3年連続で3千万円を超えた。麦の被害が最も多いが、食害は海にも広がり、養殖ノリも食べられている。麦にノリ、佐賀の特産品は鳥にまで「おいしい」と知られているようだ◆「カモにする」はもうけやすい相手、くみしやすい相手を都合よく利用すること。餌を取りに飛び立ったカモは再び元の場所に帰ってくるため、簡単に捕まえられることから生まれた表現だという。ネギをしょってくれば、労せずしてカモ鍋にありつける◆さて、食害対策は奏功するのか。相手は数も多い。追い払うのも飛来を遮るのも簡単ではないだろうが、農家や漁業者がカモにされるのを見過ごすわけにはいかない。(知)
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