「新聞は“つまずき石”であれ」と言った人がいる。前へ進んでいる時、小石につまずいて「おっとっと」と立ち止まる。立ちはだかる高い壁でなくていいが、少し立ち止まって考える時間をつくる。新聞はそんな役割を果たすべきだという◆一方で、新聞は問題点をあげつらって水を差す。正論のつもりだろうが、高みから文句をつけているようで鼻につく。そうした批判を受けることもある。客観的に、公平中立に物事を捉えるのは実に難しい◆行政をチェックする議会も似たようなところがある。佐賀県議会は県立大学構想を具体化する事業費に一旦、ストップをかけた。執行部は「判断材料を提供するために前へ進ませて」と再考を求める前例のない展開となり、最終的には事業費を盛り込んだ予算が可決された◆結局は最初に戻って原案通りとなったが、議会は水を差しただけかといえば決してそうではないだろう。短い時間の立ち止まりではあったが、つまずき石の役割を果たしたのではないか。県民の関心は高まり、調査・検討状況の報告や十分な議論を求める「付帯決議」も残した◆つまずき石は中止に追い込むのが目的ではない。考えた上で再び前へ進んでもいいし、引き返してもいい。よりよい結果につながるなら、背中を押すだけでなく、つまずき石になる時があっていい。(知)

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