熱傷も子どもにとても多い傷害の一つです。やはり乳幼児に多く、台所と浴室が危険ゾーンです。1000円札に印刷されている野口英世がいろりに転がり落ちて左手にひどい熱傷を負ったエピソードは有名ですが、私の同級生にも乳幼児期に受けた顔面の熱傷を成人後に形成手術で治療した友人がいました。身体機能の傷害だけではなく、一生を通して心の傷となる可能性もあります。家庭内での乳幼児の熱傷の原因は、70%以上がポットや鍋などからの熱湯と炊飯器などから発生する蒸気です。次いでアイロンや花火などの発熱物や発火物が原因となっています。一方、年齢が上がってくると火災による熱傷が増えてきます。火災や爆発、化学薬品による熱傷は生命にかかわるものもあり、熱風による気道や目の傷害は重大です。

 家庭での予防については、居住・生活環境に応じた個別の対応が必要です。一般的な注意は「乳幼児のいる家庭ではテーブルクロスは使用しない」「テーブル上の熱い鍋やポットは子どもの手が届かない位置に置く」「ストーブやコンロ、アイロンなどは子どもから遠ざける」「子どもを抱っこして食事を与えることはしない」「台所は柵をして小さな子が入りこめないようにする」「床の上にケーブルや電気コードをはわせない」「子どもが浴室に一人で入りこめないようする」などです。

 熱傷の重症度は1~3度に分類して判断します。1度(皮膚が赤くなっていて、痛みがある)、2度(水疱(すいほう)ができている)、3度(白、黒、褐色になっていて、痛みがない)。対応は、ただちに衣服の上から流水で最低20分は冷やしてください。市販の冷えるシートやアロエなどの民間療法は不可です。熱傷の範囲が子どもの手のひら以下で水疱ができていなければ、病院が開くまで様子を見てもよいです。それ以上の広範囲の熱傷、色が白や黒に変色している、可動部位(関節)や手のひらの傷害、重症度の判断がつかない場合は救急受診です。予防措置を怠って、子どもたちに生涯の傷を負わせないようにしましょう。

 

浜崎 雄平(はまさき ゆうへい)
佐賀整肢学園 からつ医療・福祉センター顧問。佐賀大学名誉教授。
1948年、鹿児島県日置市生まれ。九州大医学部を卒業し、テキサス大やオクラホマ大研究員などを歴任。
84年から佐賀医大(現佐賀大学医学部)小児科講師として勤務し、00年に同大小児科学教授就任、09年から医学部長を兼任する。
14年から現職。専門分野は小児の呼吸器/循環器疾患、アレルギー疾患。

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