唐津市、玄海町をはじめ佐賀県に美容・健康産業の集積(クラスター)を目指す「唐津コスメティック構想」はスタートから10年がたった。本場フランスなどと連携し、農産物など地域資源を生かした経済活動や海外展開で地域活性化を目指してきた。今、節目に振り返りつつ次のステップを考えたい。

 フランスにある世界最大の集積地「コスメティックバレー」と唐津市が協力連携協定を結んだのは2013年4月。同11月には産学官連携組織「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」が設立された。農林水産物を食品や観光だけでなく、県を挙げて美容・健康に生かす全国でも例のない取り組みが始まった。

 JCC会員数は正会員111、支援会員25に拡大。自治体や大学、研究機関のほか、民間は化粧品関連に限らず食品、設備機械、金融など幅広い。JCC事務局は「グローバルとローカル、そして海外展開にはオール九州、オールジャパンの取り組みを」と話す。

 それだけにJCC、自治体の取り組みは多岐にわたるが、柱は大きく分けて四つ。農林水産物など地元素材を生かした原料供給、商品開発▽企業誘致や起業支援など産業集積▽共同研究や人材育成など環境整備▽海外との商取引拡大-だ。

 実績はどうか。柱に沿って見ると、これまでツバキやミカン花など県産素材を使った商品化は化粧水や石けん、シャンプーなど39社149種類に上る。企業誘致は県内14社で、うち唐津市内は8社。市内では起業7社と合わせ延べ190人の雇用につながっている。

 コスメに特化した企業誘致補助金を設ける唐津市は「いろんな企業が集まり、いい循環を」とサプライチェーン(供給網)確立で、雇用機会の創出を図る。農家の高齢化、耕作放棄地の増加を踏まえ、原料の一大産地化で「地域全体の経済活性化」を描く。

 「うどん県」ならぬ「コスメ県」をうたい、佐賀県が掲げるのは「日本一コスメビジネスがしやすいまち」。半導体などと同様に成長産業と位置づけ、誘致のほかスタートアップ支援、佐賀大学と組んだ人材育成、イベントでの情報発信に力を入れる。

 海外との協定はスペイン、タイ、韓国などが続き、計6カ国のクラスターと締結。海外を含む展示会出展や商談会など市場開拓、ビジネスマッチングに取り組み、JCCは「自治体と一緒にやっている信頼があり、その強みを生かす」。

 ただ取り組みが幅広い分、課題として挙がるのが「認知度」「情報発信」だ。近年、新型コロナウイルスの影響で滞った面もあっただろう。ベンチャー系の取り組みであったり、パーソナライズ(個別化)されたコスメは大量生産・大量消費とは異なり、全体像が見えにくいのは否めない。

 国内の化粧品輸入額は昨年、国別で韓国がフランスを抜き首位になった。手頃な価格で品質がいいのに加え、韓国政府が輸出に力を入れるドラマ、Kポップなどエンターテインメントとの相乗効果もあるという。

 未利用資源の活用で有名な「葉っぱビジネス」は高齢者福祉とともに語られる。上場地区では人気コスメブランドと連携したハーブ栽培が本格的に始まった。

 県内には多様な資源があり、構想も10年がたち下地はできた。産学官の強固なスクラムで分かりやすい成功事例の発信、イメージ戦略など次への「知の集積」も図りたい。(松田毅)