
唐津市の離島・高島を拠点に、島の植物を使った化粧品原料の製造や、島を舞台にしたツーリズム事業を手がける「Retocos(リトコス)」。代表の三田かおりさんは、「化粧品や体験事業を通じて島の魅力を広めたい」と日々奔走しています。柔軟な感性でさまざまな事業に取り組む三田さんに、仕事にかける思いを聞きました。
島との関わりを深めて
佐賀市出身で高校生の頃から化粧品が大好きだったという三田さんは、大学卒業後化粧品会社に就職し、デパートの美容部員として働きます。結婚、妊娠を機に離職しましたが、化粧品への思いは強く、知り合いの紹介で一般社団法人ジャパン・コスメティックセンター(唐津市)に再就職。化粧品の原料となるツバキの産地化などに携わります。業務を通じて島との関わりを深めた三田さんは、2020年にNPO法人を立ち上げ、21年に株式会社Retocosを設立。加唐島のツバキや、高島で栽培したホーリーバジルを使った化粧品原料の製造を始めます。大手洋服ブランドが手がけるスキンケア商品に採用されるなど、自然由来の成分を使った製品は高い評価を受けました。

体験事業やブランドを展開
化粧品原料の製造に加え、4月からは離島を舞台にしたエシカルツーリズムを研修プログラムとしてスタート。離島留学中の子どもや企業などが島で栽培しているハーブを収穫し、せっけんやハンドスプレーに加工するコスメ作り体験を楽しみました。この秋には、加唐島のツバキや加部島の甘夏を使ったボディーケア商品のプライベートブランド「Retocos」を設立。嬉野のホテルで販売されているほか、アメニティーとしても採用されています。「ツバキ油のうるおいで髪がしっとりする、と利用者には喜んでもらっています」と笑顔で話す三田さん。年内には佐賀空港内の売店「sagair(サガエアー)」でも販売を始める予定で、今後も全国のホテルなど販路の拡大を目指しています。
島との「関係人口」を増やしたい
(株)Retocosは今年8月、革新的な新事業に取り組む企業を表彰する「九州ニュービジネス大賞」で奨励賞に選ばれました。その後も三田さんの新事業に対する熱意は衰えることなく、現在はティーブレンダーとコラボし、島でとれたハーブと県産の茶を組み合わせた斬新なブレンドティーの開発を進めています。「佐賀でのモノづくりをどんどんアップデートして、プライベートブランドの商品を充実させたいですね。Retocosの事業を通じて、外部の人が島と関わりを持つ『関係人口』を増やし、経済や自然が循環する仕組みを作りたいと思っています」。自社の商品を通して島の魅力を発信する―その夢に向かって、彼女の挑戦はまだまだ続きます。
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三田 かおり(みた・かおり)
■1978年、佐賀市生まれ。大学卒業後、外資系化粧品会社を経て一般社団法人ジャパン・コスメティックセンターに就職。2021年に株式会社Retocosを設立し、化粧品原料の製造やエシカルツーリズム事業を行う。
■株式会社Retocos
HP https://retocos.com/
IG retocos.cosme
〔文:久保禎一/写真:本人提供〕