
通常、異物誤飲は生後5カ月以降の子どもに起き、最も多いのは6カ月~11カ月で、2歳未満が約70%と報告されています。飲み込んだ異物が気管に詰まれば(誤嚥(ごえん))、前回述べた窒息死の原因となります。サイズが小さくて気管を通過して、より奥に入り込めば、肺炎や無気肺などの重篤な傷害の原因となります。今回のテーマである食道や胃のなかに入った場合は、中毒や穿孔(せんこう)などを起こすことがあり、場合によっては命に関わることがあります。生後5~6カ月を過ぎると手に握ったものはなんでも口に持っていくようになります。こどもの口の中に入る大きさは最大40×50mmですので、これ以下のものは手の届く範囲には置かないようにしましょう。3~5歳児でも大人のまねや興味本位でものを口に入れ、はずみで飲み込んでしまうことがあります。
異物誤飲で最も多いのはタバコ(加熱式製品も含む)で、次いで医薬品や医薬部外品です。たばこの吸い殻が浸かった液はニコチンが溶け出すのでとても危険です。大人の薬の中には1錠でもこどもには重篤な中毒をおこすものがありますので、子どもの前で薬を飲まない、たばこを吸わないなど日頃の注意が必要です。あと、おもちゃ、プラスチックや金属製品、電池、硬貨、磁石、文房具、洗剤、漂白剤、アルコール、防虫剤、除草剤など、液体/固体のあらゆるものの誤飲が報告されています。中でもリチウム電池は特に危険で、緊急対応が必要です。防虫剤、除草剤、酸性・アルカリ性洗剤、塩素系漂白剤、揮発性の強い液(灯油、有機溶剤など)鋭利なもの(押しピン、くぎなど)も大変危険で、飲み込んだおそれがあれば急いで病院を受診してください。受診の際には飲み込んだもの、その内容をしるしたラベルなどを持っていくと有用です。
異物誤飲予防の原則は“子どもの口に入るものを、子どもが手に入れることのできる場所に置かない”ことです。
●浜崎 雄平(はまさき ゆうへい)
佐賀整肢学園 からつ医療・福祉センター顧問。佐賀大学名誉教授。
1948年、鹿児島県日置市生まれ。九州大医学部を卒業し、テキサス大やオクラホマ大研究員などを歴任。
84年から佐賀医大(現佐賀大学医学部)小児科講師として勤務し、00年に同大小児科学教授就任、09年から医学部長を兼任する。
14年から現職。専門分野は小児の呼吸器/循環器疾患、アレルギー疾患。