嬉野市塩田町の古民家で、先端技術「Web(ウェブ)3」に関する技術が習得できる教室「SolidityHouse(ソリディティハウス)」が開かれている。運営会社sgの社長で大阪大特任研究員の落合渉悟さん(33)が主催し、最先端の指導を求めて全国から大学生やエンジニアが集まっている。
ウェブ3は、ブロックチェーンを利用してプラットフォーマーに情報を集約せずにやりとりできる次世代のインターネット。取引の透明性が高く改ざんができない性質を利用し、新たなサービスが続々と開発されている。
9月に開いた教室は経済産業省の事業の一環で実施し、プログラミング経験のある大学生やエンジニア15人が参加した。ブロックチェーンの基礎技術で、デジタル上の契約などを自動化する「スマートコントラクト」を作成できる「solidity言語」を学んだ。習得すると、仮想通貨のマーケット作成などができるようになる。
5日間の合宿形式で開催し、落合さんを含めた複数のエンジニアがチューターとしてサポート。参加者には事前に課題を渡し、合宿では実践課題に集中的に取り組んだ。期間中は教室と同じ部屋に布団を敷いて寝泊まりし、夕食には佐賀の食材を使ったバーベキューを楽しんだ。
サークルの先輩に誘われて参加した大阪大2年の漆垣皓大さん(19)は「都会のように騒音がなく、のどかで集中しやすい。課題のレベルは高いが、(他の参加者と)教え合ってどうにか付いていけている」と感想を語った。情報科学が専攻で、「教育分野でブロックチェーンを活用したい」と夢を膨らませる。
落合さんは鹿児島県薩摩川内市出身。ブロックチェーンの高速化に関わる研究などで実績を残し、2020年から特任研究員として大阪大で講座を持つ。スマートコントラクトを利用したDAO(自立分散型組織)の社会実装に関する開発や研究を進めている。21年秋に佐世保市から嬉野市に移住した。
スマートコントラクトは先端技術で、世界的にもエンジニアは不足しているという。自身も企業からの依頼を請け負いながら、需要と供給に隔たりがあると感じていた。「このギャップが利益になる」と、教室事業を立ち上げた。
空き家を複数改築し、自宅や社員と生徒のシェアハウスとして活用している。参加者は随時募集しており、費用は5日間のプログラムで1人当たり25万~40万円。落合さんは「合宿を終えれば、一人前のブロックチェーンエンジニアを名乗れる。佐賀といえば、先端技術を貪欲に取り入れた鍋島藩。佐賀から人材を育てていきたい」と意気込む。(小島発樹)
■ブロックチェーン 暗号技術を用いて取引の記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種。ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のように連結してデータを保管する。仮想通貨の取引履歴の記録などで活用されている。