明治・大正・昭和期に夜学会が開かれていた国有形登録文化財の中野邸=太良町伊福

七浦村伊福で夜学会を開き、社会教育の先駆者とされる中野万亀

夜学会が開かれていた国有形登録文化財「中野邸」の座敷を清掃する佐賀大の学生=太良町伊福

 明治・大正・昭和期に七浦村伊福(現・太良町)で社会教育に尽力した女性教育者・中野万亀(なかの・まき1872~1949年)が、夜学会を開いていた国登録有形文化財「中野邸」を活用する動きが進んでいる。学生を交えたワークショップを通じ、地域における社会教育の先駆けとして、女性の社会参加を推し進めた万亀の功績に再び脚光を当て、貴重な歴史資源としての活用を模索している。

 万亀は旧鹿島藩士の娘として生まれ、佐賀県立師範学校女性部を卒業し、県内で初めて女性正教員となった。伊福の実業家・中野権六に嫁いだ1892(明治25)年から、自宅で地域の青年が学問を学ぶ夜学会と、女性向けの中野家庭寮(花嫁学校)を開催。家庭寮では生徒たちと共同生活をしながら裁縫などを教え、女性の地位向上に取り組み、婦人会も設置した。

 中野夫妻が暮らした中野邸は1909(明治42)年建築で、藩主を迎える式台玄関と教育活動に使われた座敷を備えており、2017年に国有形登録文化財に選定された。伊福には万亀の顕彰碑が建つが、戦後は記憶の風化が進んで、功績を知る人も少なくなっており、中野邸の保存・活用が課題に挙がっていた。

 そのため、田澤義鋪(たざわ・よしはる)記念館の高橋研一さん(鹿島市民図書館学芸員)が、佐賀大後藤研究室とNPO法人「まちのつぎて」と連携し、活用を考えるワークショップを18日にスタート。佐賀大で建築を学ぶ学生らと邸内を清掃し、建築の意匠や特徴を調べて、万亀の功績についても学んだ。今後は地域とも連携しながら、活用策を探っていく。

 高橋さんは「万亀は教育を通して地域を豊かにしようと取り組んだ先駆者で、全国的に見ても稀有な女性だった。学びの場だった中野邸を活用し、改めて地域における教育の大切さと、女性の社会参加について考えるきっかけになれば」と話した。(山口源貴)