佐賀県の高校生たちのアイデアを詰め込んだ手のひらサイズの超小型人工衛星「SaganSat0(サガンサット・ゼロ)」が来夏、国際宇宙ステーションから宇宙空間へ放出される。2021年度から4カ年計画で人工衛星の開発を進めており、27日、実際に打ち上げる実機の最終試験をクリアした。
県と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の連携プロジェクト「JAXAGA(ジャクサガ)」の一環。唐津東、北陵、武雄、有田工、早稲田佐賀の高校5校の生徒たち、延べ約50人が参加してきた。開発に当たっては、12年から27機を開発・運用し、小型衛星分野で6年連続世界一を誇る九州工業大(北九州市)がサポートした。総事業費は約8千万円。
人工衛星はキューブサットと呼ばれる10センチ角で、重さは約1・2キロ。各校は三つのグループに分かれて、360度カメラを二つ備えて720度の全方位画像に合成する機能をはじめ、地球上の気候を調べる赤外線カメラ、宇宙空間の放射線を音として集める機能を組み込んだ。生徒たちがそれぞれの機能を備えた基板を開発し、衛星のフレーム部分などは大学側が準備した。
これまでに真空状態の耐久テストなども終えており、27日は北九州市の九州工業大で打ち上げ時の衝撃に耐え得るかを調べる振動試験を行い、全ての工程が完了した。今後は来年の3月に茨城県つくば市のJAXAに運搬し、6月末から7月に米国の宇宙ベンチャー企業スペースX社のロケットで国際宇宙ステーションへ運ぶ予定。宇宙空間への放出は8月ごろを見込んでいる。
開発当時の生徒たちはすでに卒業しており、現メンバーは打ち上げ後に運用を担当する予定。振動試験に生徒たちは立ち会えなかったものの、唐津東高科学部の生徒たちは「先輩たちの成果を引き継ぐのは緊張する」「赤外線センサーを活用すれば、佐賀の防災につなげられる」などと試験の成功を喜んでいた。
プロジェクトをまとめる武雄市の県立宇宙科学館宇宙教育プロジェクトの田中政文マネージャーは「生徒たちが取り組んできたミッションが、ようやく成果になろうとしている。一日も早く打ち上げて喜びを分かち合いたい」と話す。(古賀史生)